「インターネット概論」の目次

4. ネットワーク・アプリケーション(3)

平成10年10月25日23時28分版(一応,完成)

 今回はWWWシステムの残りの話と, インターネット放送のようなマルチメディア的な事を説明します. と言っても毎回のようにぎりぎりに原稿を書いているので, どこらで切れるかは分かりません. 平日はなかなかまとまった時間が取れないので, 日曜の午後のような時間を使うのは辛い所です. (本当は千里の万博公園で今が見頃のコスモスを見に行きたかったのですが, 明日から1週間ほど中国なので我慢です.)

 インターネットおよびインターネット技術は, 本当に日進月歩(秒進分歩かもしれない)なのですが, 今日の話は特に流れが早い所です. 4.4で扱うマルチメディア系の話も, 単にマルチメディアを扱うといった点から, 応用に適した使い方にシフトしてきていると思っています. ここで扱えきれなかった事は,12月と1月に予定している総合的な話である 「情報システム構築」の方にしようと(また,先送りですが)考えています.

 では,始めましょう!


4.3 WWW(World Wide Web)(続き)


4.3.8 CGI,Java

 先程までは,WWWブラウザからURLを出して, それに対応したWWWサーバが指定されたホームページ等の内容を WWWブラウザに返すと言いました. 普通に文章や絵などを送って貰う場合にはこの表現で構いません. proxyサーバは,その内容の伝送の効率的な実現に過ぎません.

 しかし,訪れた人の数が表示される(カウンタ)ようなホームページでは, アクセスするたびに違う内容が送られてくる事になります. これは,

と呼ばれる機能を使っています.ここではCGIの話をします.

 まずは,先程のカウンタのCGIを例に取って話をします. カウンタを持つホームページがあるWWWサーバでは, カウンタの値を更新するCGIプログラムを持っています. ユーザがWWWブラウザからそのホームページをアクセスすると, そのホームページは 実際にはWWWサーバが処理してホームページの内容をユーザに返すのですが, CGIが記述してあると,その対応するCGIプログラムを起動させて, その結果をつけてユーザに返します. カウンタがあるホームページでは,WWWサーバの中にそのホームページのための 訪問者の数を入れておくファイルがあるので, その数に1足して(1を足しているはずです!)ファイルの中の数を更新した上で, その値をつけて返します.

 CGIは実際にはプログラムなので,幾つかの記述方法があります. WWWサーバがUNIX系の場合には,C shell programmingを使ったり, PERLと呼ばれる言語を使ったりします. このCGIを使うと,今まで単に見せるだけだったホームページが ユーザからの入力を受け付けて適当に処理してくれたり, 刻々変わる情報を表示してくれたり, それこそ大概の事をやってくれます. 大きなシステムを組む場合には,6章の情報システム構築で話すように, バックエンドのデータベース・サーバに問い合わせるような事もします.

 CGIはこのように多くの機能をWWWシステムに持ち込みますが, そのWWWサーバをあまり信用出来ない人が使う場合にはいくつかの問題が生じます. 信用できないと言う意味は故意にシステムのセキュリティ等を乱す人だけではなくて, CGIプログラムを間違ったがために,大事な情報が外に洩れるような事を言います. 従って,商用プロバイダの場合は,CGI等を置かせない所や, チェックしている所や,自由に置かせている所とまちまちです. 大阪市立大学の場合は研究者が作成する分には問題はないのですが, 学生が情報処理教育の一貫としてやる場合には, まだセキュリティの概念も薄い事もあって出来ないようになっています. ただ,カウンターの希望は多いので, これだけは出来るような仕組みになっています. このあたりの話しは次回のセキュリティの所で話せたらと思います.

 CGI等と違ってJavaの場合は, WWWブラウザがJavaで記述されたファイルを読み込んで, WWWブラウザの中でJavaプログラムを解釈して実行します. CGIではWWWサーバの方がプログラムを実行したのに対して, Javaでは,WWWブラウザ側がプログラムを解釈して動作をすると考えればいいでしょう. そのため,WWWブラウザがJavaを解釈するものでなければならないのは当然です.

 CGIやJavaについては私も耳学問の所が多いのでこのあたりにしておきます. そこまで手がまわらないというのが実情です. そのくせ,本だけは何冊か買っているので, 参考文献の所に適時,関係する本を書いておきますので参考にして下さい. じっくり筋道を理解して読む本や,マニュアル的に読む本等があるので, 状況に応じて買いそろえておくのがいいでしょう.


4.3.9 WWWの新しい展開

 「新しい展開」などと項のタイトル名にするにはおおげさなのですが, WWWシステムは最初に,HyperMedia環境をインターネットで実現するといった 構想以上の広がりをみせてきています. WWWブラウザの立場からは,Netscape Navigator/Communicatorや Internet Explorer等のメジャーなWWWブラウザが 等,数え上げれば切りがないように便利になった事です. ある意味では,WWWブラウザがあれば何もいらないので, WindowsやMAC/OSに依存しないコンピュータが有望であるといった考えもあるほどです.

 一方,WWWサーバは先ほど話したCGIやJavaの機能を持ち込んで, 単に情報を出すだけのメカニズムから, ユーザ等からの情報(入力)を得て, それを処理した上で結果を返せるようになりました. CGIで代表されるような簡単な処理の場合はこれでいいのですが, もう少し大規模や情報検索や更新が必要な場合には, WWWサーバの後段に強力なデータベースのサーバを構築して, WWWサーバをユーザに対する前面のサーバとして機能させる考え方が出て来ています. これからの事については,「情報システム構築」の章で改めて取り上げたいと思います.

 これも情報システム構築っぽい話ですが, WWWシステムのおかげで,ユーザはWWWブラウザがあればいい, サーバ側はWWWサーバのマシンとソフトがあれば, 後はホームページを書くだけでいいという風になりました. そのため,私も最近始めましたがインターネットバンキング等の 電子取り引きの入口に差し掛かってきたように思えます.

 ビジネス的にはNetscapeが勝つか, IE(Internet Explorer)が勝つかといった話もありますが, インターネット的なセンスでは,どちらも共通の土俵(HTML)で それぞれに個性を出しながら生き残って欲しいものです.


4.4 オーディオ・ビデオツール

4.4.1 マルチメディアとインターネット

 ここでは「マルチメディアとインターネット」といった大きな話を, 1回の講義の半分でやろうとしています. それで,そのための基礎知識として私が今年の後期から始めた 大阪市立大学看護短期大学部(看護婦(夫)の卵の学校/学部です)での 「情報科学」の講義のレジュメを見て下さい. この中で2回目の 「情報科学での単位や数字」では, 桁や単位以外に マルチメディアでの数字にも触れています. また,参考文献であげた力武健次の「プロフェッショナル インターネット」の 2.1では「インターネットとリアルタイム通信」が書いてあり, 私と違ってちゃんと書いてありますから, 深くしっかり理解したい方には一読をお勧めします.

 マルチメディアに対する定義はいろいろあるようですが, ここはインターネット概説ですので,単純に

と考える事にします. テキストをマルチメディアに入れるのはおかしいと考えられるかもしれませんが, ここで言うテキストとは字の大きさや字体や色等の特性を持つもの (rich textとかいいます)までを含んで考えます.

 このようなマルチメディアの扱いについては 4.2.7項で電子メールに対するMIME表現として話をしました. ここでは,音や画像とネットワークの速度という事で少し話をします.

 4.3.5のWWWシステムの仕組みの表で,音や画像についてWWWブラウザは 幾つかの形式のファイルを扱う事を話しました. この音や画像に対するそれぞれのデータの形式はWWWシステムが扱うのだけではなくて, 音や画像(静止画と動画)のデータ形式の標準(いくつかありますが)と 考えて貰えばいいと思います. 逆にいえばそのように幾つかの標準形で落ち着いたので, ユーザからはそれらの標準形式間の変換だけを考えれば良く, システムからはそれらの標準形式だけを扱えばいいことになります.

 いつものように,話が横に行きましたがもとに戻しましょう. 音の場合は,電話を考えると新しい電話であるISDN電話を使って説明します. ISDN電話はデジタル電話ですが,スピードは1回線あたり64Kbpsです. これは1秒間に64Kbitのデータが飛ぶ事で,バイトに換算すると1秒に8KBです. この伝送スピードでは人の声程度でしたら,それほど変わらずに伝送できます. そうすると,人の声をデジタルで録音してファイルに保存する事を考えると, 1分間喋られると8KBx60=480KBのファイルになる事になります. 3分間カラオケ1曲歌われるとフロッピー1枚必要と言う事になるのでしょうか. 音に関してだけでもたくさん話す事はあるのですが, ここでは音の伝送に人の声程度なら64Kbpsは必要とだけ覚えて下さい. それより早くなれば良い音楽の伝送に使え,遅くなれば音質が悪くなったり, 聞き取りにくくなります.

 次に画像はどうでしょうか.まずは静止画を考えています. 静止画といってもデジタルで表した場合には画素をどのように取るか, 各画素の中で色を何色にするかでデータ量は大きく変わってきます. 更にそのような各画素のデータを どのような表現でデジタル化するかによっても変わります. また静止画の場合には,横や縦に同じ色が続くと言う事も多いので, いろいろな圧縮技術でもデータ量は変化します.

 静止画の伝送を考えた場合には,上で述べたデータ量で静止画のファイルと しての大きさが分かるので,それを今考えているネットワーク上で, 何秒で送れるかの話しになります. ホームページ的には私自身は20KBから30KB程度の画像で止めようと思っていますが, このような大きさの画像でも, ISDN電話を使った場合には2秒から4秒ぐらい掛かります. これが200KBの画像で,普通のアナログ電話で,モデムもスピードが遅ければ 秒1KB程度の速度だと3分20秒かかったりします.

 最後に動画ですが,この動画の標準形式の1つにMPEGと呼ばれるものがあります. 動画はテレビを考えて貰えば理解が早いでしょう. テレビは細かい話を省くと1秒間に30枚の画像が連続して表示されます. 人間は1秒間に5〜6枚の連続画像を見せられると,その画像がゆっくり変化すれば, 動いていると感じるそうです.したがって1秒間に30枚は十分な数です. 先程は静止画の話をしましたが,その静止画が1秒間に30枚の割で出ますから, 1秒間の動画なら静止画の大きさx30というとても大きなデータ量になることが 容易に推測出来ると思います.

 この動画の標準形式としてMPEG-IとかMPEG-IIがあります. MPEG-IはビデオCDの画像やPerfectTVの画像で, MPEG-IIはDVDの画像と思って貰えばいいでしょう. アバウトに言うと,MPEG-Iはビデオの取られたテレビの画像, MPEG-IIは綺麗なテレビの画像に近いと思って下さい. で,この伝送スピードは

が必要であると覚えて下さい.

 まとめると以下のようになります.

 もちろん上を見ればきりがないわけで,音ならCDなみの質を要求されたり, 静止画なら高級美術品の質を要求されたり, 動画ならハイビジョン並のものを要求される事もある事だけは忘れないで下さい.


4.4.2 オーディオ・ビデオツール

 インターネットにおける音声放送や動画配信については, なにはともかくとしてMboneについて話さないといけません. MboneとはMulticastを用いた通信のBackboneの事です. Multicastについてはすでに7月のIPの説明の 3.4.4で出て来ています. 簡単に言うと,IPの世界で特定のグループ間で通信する仕組みです. 放送(broadcast)の仕組みを使うと全員が聞かないといけないし, 普通の1対1の通信で実現するといくらでの(グループに所属する人分だけ) チャネルが必要になります. それに対してMulticastでは,登録した人(参加したい人だけ)がパケットを 取り込めばいいわけです. 所が,言うのは簡単なのですが, MulticastをサポートしているOSも少ない事もありましたし(技術力が必要だった), 細いインターネットでトラフィックが輻輳するのも問題があり, 実現手法として世界で技術力のある所が管理をしているネットワークを バックボーンとして放送的にMulticastを流し, その上の適当なコンピュータから1対1通信でMboneのトラフィックを流して もらうになっています.

   技術的には難しい技術なのですが, 実際に中を流れるのは,会議の中継であったり,ロックのコンサート風景であったり, NASAから流されるスペースシャトルからの映像であったりして非常に 応用としては興味のあるものです. 大阪市大でも現在は,学術情報総合センターの教員グループだけで参加していますが, 徐々にネットワーク環境を整備して,学内で使えるようにしようとしています. 研究室にいながらNASAからの映像(NASAテレビと言います)が見えるのは 感動ものではあります. 3.4.4でも書きましたが,Windows 95が不安定ではありますが, Multicastをサポートしているのも大きな点です.

 ネットワークを使ってテレビ会議をするアプリケーションとしては, CU-SeeMeと言われるアプリケーションがあります.最初のCUの部分は Cornell Universityの事で名前のようにコーネル大学で開発された テレビ会議システムです. サーバを用いる事で複数の人が参加出来るものです.

 それにないして3年ほど前から Xing Technology社から Streaming技術を使ったStreamWorksという アプリケーションが提案されてきました. これは,動画+音声をインターネット上で配信する技法です. 技術的には,4.4.1で話した動画等の標準であるMPEG1を使い, なおかつ適当にトラフィックを間引きながら, 動画や音声の性能に準じて配送しようとする技術です. 大阪市大の 学術情報総合センターのホームページの最後に 「学術情報総合センター紹介ビデオ」という所がこの技術を使っています.

 残念ながらこの画像は300Kbpsの転送速度でないとちゃんと見えないように なっているので,学内や大学や一部の商用プロバイダに接続した所しか 配送されてこないと思います. 学内のように一番遅い線が10Mbpsという環境では, 20分のビデオを音と画像があまりずれる事無く受信できます.

 このStreamWorksが評価された点は, 受信ソフトが無料でダウンロード出来る事と, サーバ側の費用がワークステーションをもっていれば100万円前後で 済んだ事です(費用は伝送速度の合計でランクがあります). インターネットを使えば放送局が100万円程度で出来るからです. 我々も2セット購入しており, 6月のシンポジウムでは学内用の動画+音声と,インターネット用の音声を ストリームとして作成しました.音声ではアメリカでも聞こえたと報告が来ています.

 最近では,Real Networks社の Real Playerがよく使われています. 当分はこれが主力になるのではないかと思って, 我々も50万円程度のエンコーダを入手しています. この講義も最終回までは,私が講義を5分程度するビデオからエンコードして, VOD(Video On Demand)で講義が聞けるファイルを作成しようと思っています.

 Real Playerのいいところは,ユーザに対して適当な速度が提供できる事です. うまく速度が選べて, トラフィックが混んでなければ最後まで動画や音声が取り込めます. 速度が速かったり,トラフィックが混んでいても, 適当なタイミングでpauseをいれて貯めてくれる(buffering)ので,まあ聞けます. 私は今,大阪市のホームページの Web Studioから 42Kbpsで動画と音声を取り込んでますが(自宅です), 5分間の演奏や動画を切れることなく取り込めました. このようなインターネット放送ではユーザのネットワーク環境にあわせた 速度等の設定が(可能なら複数)必要です.

 これ以外の技術では,Vivo ActiveやIP/TV等の製品もあり, これから生き残りを掛けてのビジネスの戦いが続くでしょう. 基本的には,各方式とも独自方式を取っている事が多いので, リアルタイムの放送にしても,VOD形式にするにしても, VHS以上のビデオに残して置く事が,これからのためにもいいように思います. 良いソースを残して置く事ですね.


4.4.3 オーディオ・ビデオツールの応用

 4.4.1に書いたようの音声にしても,動画にしてもインターネットという World wideな運び手(キャリア)が出来たので, そのインターネットという制約の元でどのようにすればいいかが大部分かり, 音声付の動画や音声を運ぶ事が可能になってきました. 電波として空から落ちて来るテレビやラジオ,また手軽な電話にはまだ負けますが, 形としてインターネット放送や,インターネット電話が出て来た事は興味ある事です. それらは互いに長所や短所を持つので,それぞれを補完する形で使われるでしょう.

 テレビやラジオの場合はプロである放送局しか出来なかった事が 4.4.2で話したStreamWorksやReal Player等を使って, インターネット放送の比較的容易に出来る事です. 更にはホームページに載せた資料等を活用すれば, まさにHyper Mediaな環境で放送が出来ます. アクセスはユーザがするので,一方的な放送ではなく, ユーザが選択して利用する事ができます. その意味では,実際にどのようにすれば遠隔講義や生涯教育等に 使えて効果があがるかはこれからのことだと思います.

 インターネット電話の場合は,電話がリアルタイムであって, 会話が途中で途切れるのはまずいので,帯域を保証するようなネットワーク構成から 使われていくでしょう. 学内や企業内等のようにイントラネットの場合は利用できると思います. しかし組織内の場合はもともと通信料金は必要ないので, インターネット電話の1つの利点である,間をインターネットで通信するので 電話料金が安くなると言う利点はなくなります. 組織の中では動画も組み合わせたテレビ電話的な利用になるでしょうね.

 オーディオ・ビデオツールがこのように使いやすくなってきたので, 既存のテレビや新聞等もうかうかできなくなっています. インターネットで新聞を読む事は,インターネットのホームページを 良く使う人にとっては当り前になっています. 放送局もホームページを上げています. CNNのようにニュースが専門の放送局だと, そのホームページが新聞社のホームページに差がなくなってきています. このような時代の流れの中で, 新聞やテレビがどのようになっていくのかは大変面白い事だと思っています. 当事者は大変だとは思うのですが,,,


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