「インターネット概論」の目次

3. 通信の基礎とTCP/IP(前半)

平成10年6月28日23時20分版


 今回から2回に分けて通信の基礎からTCP/IPまでの話をします. 昨年はIPまでたどり着いたものの,TCPやその上のプロトコルには届きませんでした. 今年は是非そこまで話したいと思います. そのためでもありませんが,昨年の講義に追加する形の講義録になります. 今回分で追加するのは,いろいろな物理的なネットワークの部分です.

 TCP/IPというプロトコルはインターネットの命のような部分です. この部分が分かれば何故そうなのかという本質的な事が理解できますし, これからインターネットがどうなるかもおぼろげながら推測出来るでしょう. このTCP/IPを支えるものとしていろいろな物理的なネットワークがあります. またTCP/IPという共通の基盤の上に電子メールやWWWシステムのような ネットワーク・アプリケーションがあります.

 これらのTCP/IPを中心とした考え方は,最初の基礎の所で, 図を使って説明していきます. 特に3.1.2のOSIの7層のあたりを感覚的に分かって貰えば, このインターネット概論の第1関門を通過した事のなると思います.


3.1 (インターネットのための)通信の基礎

3.1.1 前回の復習を兼ねて

 まずは前回の2.1の復習を兼ねて話を始めましょう. 2.1のポイントは世界のコンピュータの間でやりとりを出来るようにしましょう. そのためにコンピュータにIPアドレスという番号やドメイン名をつけましょう. また,コンピュータ上では複数のプログラム(プロセスとしました)が 見かけ上同時に走っているので, そのプロセス間の通信も取り決めも必要です.といった所ですね.

 複数のプロセスが走るのはマルチプロセスと言います. このマルチプロセスが出来るのが,UNIXといわれる基本ソフト(OS)だったわけですが, 今はWindows95やWindowsNTというOSもこの動作が出来ます. このUNIXだ,NTだという話は7章の情報システムの構築あたりまで延ばす事にしましょう.

 図3-1は前回の図2-2をもう少し, 実際のプロセス名にしたものです.感じとしてはコンピュータのハードウェアと 基本ソフトウェア(OS)の上に複数のプロセスが動作しているものと 捉えてもらえると嬉しいです. この図のなかでは,サーバ間の通信もありますし, サーバとクライアント間の通信もあります.

 普通はユーザはコンピュータの前に座ってメールを読み書きしたり, ホームページを見たりします. 図の中では,Windows95やMAC/OSが動くクライアント機で, EudoraPro等のメールソフトやNetscape CommunicatorのようなWWWブラウザを 操作していることになります. クライアント機ではワープロや表計算もしているので, あえてネットワーク対応でないプロセスも書いておきました. 私も今はこの講義録を書いているわけですが, 画面にはSSL TeraTerm(暗号化された端末ソフト)の画面が3つと, Netscape Navigatorの画面が1つ開いています. また,バックグラウンドでICQが走っています.

 WWWブラウザの場合はいろいろなホームページにアクセスに行きますが, 実際にはそのホームページのあるWWWサーバに 「xxxという名のファイルを頂戴」とプロセス間通信で問い合わせています.

 サーバで走っているプロセスでは,クライアントからは仕事の要求が来て, それに対して応答をしますが, それだけではなくてサーバ間でも例えば図3-2にあるように, メールのサーバプロセス間でメールの配送をしたり, ニュースの記事の配送をしたりしています. このサーバ間のやりとりは通常はユーザには関係なくて, サーバの管理者がうまく設定すれば運用しています.

 このサーバ間のプロセス間通信は,ユーザが関与しないだけに, 何かあれば管理者にメールで異常を教えるようにしておなかいといけません. 異常はサーバプロセスのダウンだけでなく, クラッカーの侵入に対してもすぐ対応できるようしなげればなりません. (侵入されないようにするのが先決ですが)

 こういう所でプロセスの動きは理解してもらえたでしょうか. 上の絵の中で Name Server が皆さんには始めての言葉か, 名前は聞いた事があるが,具体的には知らない事項でしょうね. 昨年の講義では抜いたのですが, やはりこの話しはいれないとダメかなと思っています. 次回の講義に入れるか付録にしようと思っています.

 なお,同時に進行している大阪市大の工学部の大学院の 講義では 箇条書きながらName Serverの話しはしているので, この 第2回目を参考にして下さい.


3.1.2 OSI7層

 インターネットのような大きなネットワークのシステムを理解するには, OSI(Open Systems Interconnection)7層モデルとという考え方を理解するのが, 一番よいと思います. 7層ですからしっかり7層書けばいいのですが,理解の点から図3-3のように 4層で書いてみました. ここでは上の層から見てみよう。

アプリケーション層

 アプリケーション層は,図3-1や図3-2にある いろいろな応用プログラムがある層になります. 図では例えばメールを取り上げると,下に「smtp」と書いてありますが, これは電子メールを扱うsimple mail transfer protocolの事で, メールのやりとり(送信や受信や転送)を扱うプロトコルの事です. メールやWWWやニュースやファイル転送のような各プロセスにはそれぞれ, smtp,http,nntp,ftpのようにプロトコルがあります. このプロセス毎のプロトコルを扱う層と考えてもらえばいいでしょう.

 メールの場合は図にもあるようにメールを受信するためのプロトコルである POP(Post Office Protocol)もあります. 図3-2では何気なくメールの受信と書いて,メールサーバプロセスから メールソフトまで矢印を書いていますが,実はこの矢印を実現しているのが このPOPのプロトコルと言えます.

トランスポート層

 トランスポート層は,今,話したアプリケーション層のいろいろな プロセスのプロトコルの共通の部分を扱っている所です. 図ではTCPやUDPと書いてありますが,それぞれは後の節で具体的に説明します. TCPの場合は,ざっくり言うと信頼出来る通信をするために必要な事を 行っているプロトコルであると思って下さい. 通信は2つ以上のプロセスの間のやりとりなので, 途中で片方が勝手に終了してしまうとか応答しなくなった場合でも, なんとかもう1度問い合わせをするとか, タイムアウトして自分でセッションを切ってしまうとかの処理をします.

ネットワーク層

 ネットワーク層は今まで良くでてきたIPの層です. コンピュータ間(end to end communication)の通信が正しく行われるようにします. end to endはpeer to peerとも言われます. 両端のコンピュータの場合でなく,途中のコンピュータまたはネットワーク 機器では飛んで来たパケットの中継(交換)を行います. 前回の図2-4や図2-5の場合のコンピュータBのような役割です. このようなネットワーク機器をルータと呼ぶ事は前回話しました.

データリンク及び物理層

 データリンク及び物理層では,いろいろなネットワークが書いてあります. 前回は2.2節で「いろいろなネットワークを使うインターネット」という事で, 8つ程のネットワークを書きました. そのそれぞれは構内であったり,広域であったり,移動体であったりと 状況に応じて構築したり,利用したりすると話しました. 今回はこれらのネットワークはデータリンク及び物理層を構成するものとして 登場しています.

 これらのネットワークがインターネットで使える理由は, 簡単に言うとみなIPプロトコルをサポートしているからです. 各ネットワークは直接IPプロトコルをサポートしているのではなくて, まずはデータリンク層として,「1つのネットワーク」の中で通用する プロトコルを使って「1つのネットワーク」内で通信をし, その通信がIPプロトコルをサポートします. その「1つのネットワーク」の中で通用するプロトコルとしては, LANで良く使われるイーサネットのイーサパケットや, 電話でプロバイダに接続する時に使われるPPPがあります.

 と書きながらこれではなかなか理解して貰えないかなと反省しています. そこで,データがどのような形で構成されて(パケット化されて) インターネットに飛び出し,どのような形で相手に届くかを考えてみます. その他の物理的なネットワークについては簡単に解説風に述べておきます.


3.1.3 データの流れ

 皆さんがホームページを見たり,メールの送受信をする場合を考えてみましょう. ホームページを見る場合はユーザは相手のURLを記述しますね. (URLについてはWWWシステムの所で話します.) この記述されたURLを入力したり,リンクをクリックした場合には, その操作がWWWブラウザで解釈されて, 図3-3の上の真中にあるWWWアプリケーションのプロトコルである http(hyper text transfer protocol)の約束で以下のようなデータが作成されます.

getファイル名

図3-4 HTTPのプロトコルの例

 このデータはhttpのプロトコルである事と, 相手のWWWサーバのIPアドレスがWWWブラウザで解釈されて, トランスポート層に落されます. WWWブラウザは例えば

        http://www.media.osaka-cu.ac.jp/

のwww.media.osaka-cu.ac.jpの部分を適当なName Serverに問い合わせて IPアドレスを手にいれます. その意味では, 図3-2では,WWWブラウザソフトは Name Serverプロセスも利用しています. このことは

        http://160.193.3.1/

と直接,IPアドレスを打ち込んでも同じホームページがでる事で分かります.

 インターネットにはいろいろなネットワーク・アプリケーションがありますから, それぞれに対応するプロトコルがあるわけです.もう1つの例としてメールを 考えて見ましょう.このメールのプロトコルはsmtp(simple mail transfer protocol) といいます.このプロトコルも

data中野です.

図3-5 SMTPのプロトコルの例

のような形をしています. データ部が「中野です.」という事を送っています. メールでは発信人や宛先の通知もこのような形で行います. このあたりは何処まで深く説明するかの問題ですが,4章で軽く触れるつもりです.

 さて,トランスポート層に落されたデータはどのようになるかと言うと, TCPのプロトコルの規則で,TCPの表書き(ヘッダーといいます)をつけた

TCP HeaderTCPデータ部
TCP HeaderHTTP
ポート番号等getファイル名

図3-6 TCPのプロトコル構成と例

の形のデータになります.この詳しいヘッダーの構成は次回にでるとして このヘッダーには後続する図3-4のHTTPのデータ等がTCPのデータ部になっています. ポートという言葉は次回からでて来ますが, 今までプロセスと言っていたものだと考えて下さい. コンピュータと通信の世界では同じ事を別の言葉で言う事があり, このポートとプロセスもここでは同じだと思って下さい. 実際にはポートにはプロセスの入口のような気持ちがあって このような名前つけがなされたのかなあと思います. 同じようにコンピュータの世界では「バイト」というのを, 通信の世界では「オクテット」といったりします.

 この図3-6のデータが,更にネットワーク層に落されると,宛先や発信元の コンピュータのIPアドレス等が付与されて

IP HeaderIPデータ部
IP HeaderTCP HeaderTCPデータ部
宛先や発信元のIPアドレス等ポート番号等getファイル名

図3-7 IPのプロトコル構成

となります. この形のデータはIPパケットという形でインターネット上を走る回る事になります.

 2回目以降いろいろな図を出していますが, それは実際のIPパケットがどのようなイメージでインターネットを流れているかを なんとか理解して貰おうと思って作成したものです. ネットワークは電気回路と同じで実際のものが見えないだけにイメージが掴めず, それで嫌いになったり分からなくなってしまう人が多いので, この図で直観的にでもいいですから理解して貰えれば嬉しいです. 実際の大学の講義では,このパケットのリアルタイムのスナップショットを見せて, 「ほら,xxxというコンピュータからyyyというホームページを 今アクセスしましたね」というような風にやります.

 さてさて,この図3-7のIPパケットですが, 実際のネットワーク(物理的なネットワークといいましょう)では, そのネットワークに応じた形のデータになります. このデータの形式は次節ではイーサネットのパケットという事で説明します. これは図3-3の下層のデータリンク層や物理層の事になります. データのデジタルの内容をどのように物理的に信号で表すかもここで規定しています. このことも次に説明します.

 今までの話しはどのようにデータがIPパケットになっていくかを話しましたが, この逆の流れを話すと, IPパケットとして届いたデータがどのように対応するプロセスのデータになるかが 分かるかと思います.

 大学院の講義用に作った図ですが, インターネットを流れるパケットの図 を示しておきます.


3.2 いろいろな物理的ネットワーク

 ここではOSIの7層のうちの下位2層を形成する物理的なネットワークを取り上げます. 特に最初のイーサネットについては詳しく話をします. このイーサネットの考え方を基準にして, 他の物理的なネットワークの特徴を簡単に示そうと考えています.

 組織内のネットワークや, 1つのシステムを複数のコンピュータで構成する場合のネットワークでは, ここで説明する物理的なネットワークをどのように使うかが問題になります. この手の話しは7章の「情報システム構築」で取り上げるつもりですが, その基盤になる話しはここでする事にします.

3.2.1 イーサネット

 LAN(Local Area Network)の代表選手であるイーサネットを, 「物理的なネットワーク」の1番バッターに据えて比較的詳細に説明をします.

3.2.1.1 イーサネットの種類

 イーサネット(Ether net)はいわゆるLAN(Local Area Network) の代表選手(古くからあり,今も良く使われているという意味で)のネットワークです. 方式としては1つのイーサネット上に複数のコンピュータ等が接続され, これらのコンピュータ等がうまくデータの送信の調整を行いながら 通信を行います. 受信側でも自分宛だけのデータを選択して処理します.  イーサネットは3つの種類があり、それぞれ

    Thick Ethernet( 10Base5 )
    Thin Ethernet ( 10Base2 )
    Twisted Pair Ethernet( 10BaseT )

と呼ばれています. これは最初から特徴を持たせた3通りのイーサネットがあったのではなく 歴史的にこの順で規格として出てきたからです. 私は1986年度の予算で(もう10年以上前ですね)当時いた 大阪大学工学部通信工学科の学科LANの構築に協力していましたが, この時は10Base5 しか選択の余地はなく, 次年度の電子工学科のLANでは10Base2が取りいれらました. 今ではイーサネットというば3番目の10BaseTが主流ですが, 状況々々に応じて残りの形状も使います

 すべてのイーサネットに10Baseの名前がついているのは速度が10Mbpsで, データがそのまま0と1を表す(basebandと言います. 周波数変調を掛けて複数の信号を周波数的に重ねて送る方式をbroadbandと呼びます) ので10Baseの名前が頭についています.

 最近はこのイーサネットも100BaseTXと呼ばれる100Mbpsの速度がでる 方式もでて来ています.サーバ系ののコンピュータのネットワークは こちらが主流になるものと思っています. さらに,1Gbpsのイーサネットもでて来ており (ギガネットのような呼び方もします), この分野のネットワークもやはり日進月歩です. 以下では最近良く使われる10BaseTの事を簡単に話をします.

10BaseTは最後に出て来たイーサネットの形態で、接続形態はスター型接続です. コネクターも電話のコネクタを少し大きくした程度なので扱いやすくなっています. 電話でいえばISDN電話のケーブルと同じでコネクタも同じです. (両者とも8線のうちの4線を使っていますが,同じ4本ではありません) 通常は10baseTのハブ(Hub)と呼ばれる装置から複数の線を出して, それぞれの計算機が接続することになります.

 10BaseTの良さは電話と同じように電話のコンセントのように部屋の中に設置 しておけば、そこから情報コンセントとしてLANに接続出来ることでしょう. また、これからネットワークが10Mbpsから100Mbpsに上がっていくとき、 部屋のコンセントはそのままで根元の接続を100BaseTXに変えて貰う事によって 高速化がはかれます. 管理側からみてもトラブルは一人のユーザに限定される事が多いので 障害場所の特定や障害の被害が大きくならない利点があります. 私が所属している学術情報総合センター内も,この情報コンセントが1450個もあって, 電話に使ったりイーサネットに使ったりパッチパネルでの配線を切り替える事で 対応出来るようにしています.これ以上は7章の「情報システム構築」にしましょう.

 10BaseTのケーブルは,100m程度以上は引けません. 従って,大規模なネットワークでは基幹部は 後で述べるFDDIやATMを用いる事になります. FDDIやATMを用いるのは速度の問題等もあります.

3.2.1.2 イーサネット上のパケット

 イーサネット上ではデータが流れているわけですが,実際には0や1が 流れているわけではありません. 電圧がパルス状になって変化しています. その電圧の形状からイーサネットの取り決めで0と1が定められています. イーサネットのパケットの形は図3-8のようになっていいます. 先頭はプリアンブル部といって, パケットの先頭のデータがなんらかの理由で落ちても 宛先アドレス部からは正しく取り込めるように1と0が交互に出て来て 最後に11と1が連続すればその後からはパケットの本体部となるようになっています.

プリアンブル宛先アドレス発信アドレスデータ部のタイプデータ長データ部またはPADエラーチェック部
8バイト(64ビット)6バイト6バイト2バイト2バイト46〜1500バイト4バイト
0101..0111xxxxxxyyyyyy06llzzzzzzzcccc

図3-8 イーサネット上のパケットの中身

次についているアドレスは

といろいろな名前で呼ばれています. イーサネットにコンピュータ等をつなぐ場合に コンピュータ等に固有に付けられるアドレスです. 6バイトで48ビットがアドレスに割り当てられていますが, 前半の24ビットはコンピュータメーカまたは イーサカードメーカ等の製造メーカーに割り当てられた番号で, 後半の番号は各メーカ毎に適当に異なるようにつけた番号です. 従って、イーサネットを流れるパケットの先頭部を見れば どのメーカのコンピュータやネットワーク機器が接続しているかが分かります. ただこのイーサネットアドレスはIPアドレスとよく混同されるので, イーサネットアドレスは1つの接続されたイーサネット上だけで通用するアドレスで, IPアドレスはインターネット全体で通用するアドレスであり, 両者は違うと理解して下さい. OSIの7層表現では2層目が「ハードウェア・アドレス」で, 3層目がIPアドレスです.

 イーサネットは10Mbpsと高速なので 通常このパケットの処理は専用のICで処理される事がほとんどです. また,イーサネットはそこに接続しているコンピュータ等が すべての流れるパケットを取り込むので, そのため,先頭に宛先のアドレスをみ, それが自分宛でなければ読み飛ばせば良いようになっています. (接続しているコンピュータが一応全てのネットワーク上のパケットを見れるのは, セキュリティ的には危険な事です. この事はセキュリティや情報システムの構築のあたりで話すつもりです.)

 宛先と発信元のイーサネットアドレスの次に続く2バイトは データ部にあるデータがどのようなプロトコル (第3層のネットワーク層のプロトコル)であるかを表しています. 以下ではIPのプロトコルを扱いますが,IPのプロトコルではこの部分は16進数 表現で

    0800

となっています.2進数表記なら

    0000100000000000

となります. このプロトコルのタイプの部分の値を変える事で, IP以外のプロトコルを流す事が可能です. プロトコルには, IP以外にもパソコンLANと言われるNetwareのIPXプロトコル等があり, 原則的には一つのイーサネットに複数のプロトコルが 流れても良いようになっています(管理者は嫌がっていますが^_^;).

 イーサネットのデータ部は最短が46バイトで最長は1500バイトです. 図3-8でデータ部またはPADのPADは, 送るIPパケット等が短くて46バイトに満たない時に 0000等で埋める事を示しています.


3.2.2 FDDI

 FDDIは光ファイバーを用いた高速なネットワークです. FDDIは Fiber Distributed Data Interface の事で, イーサネット時代にイーサネット網の基幹部として, また100Mbpsという高速ネットワークとして使われています.

 歴史がある分だけ技術的には安定しています. 組織のネットワーク(構内)の場合は次に話すATMもあるのですが, ATMは歴史が浅い分だけ技術的に問題点も多く, 安定な運用が優先される所では使われています.

 パケットの形式(フレームとかトークンとか呼ばれます)は大体は イーサネットと同じですが, データ長がイーサネットでは最大1500バイトであるのに比べて, FDDIでは4500バイトなので, ファイル転送等のロングパケットが多い場合には有利です.

 FDDIがイーサネットと違う点は多いのですが, 1つは接続形式が2重のループ(リング型接続)だという事です. この接続形態のため,1箇所(ケーブルや装置)が故障や取り換えで切れても, 残りの部分はループを再構築して稼働状態を維持できます. しかし,大きな組織を1つのFDDIで構成すると, 2箇所以上が切れると孤立する部分が出来ます. そのため最近では,FDDIを複数使う事が多くなっています.

 もう1つ特徴的な点はトークンリング形式を使っている点です. イーサネットはバス型接続なので, 同時に送信を行うとパケットの衝突が起こります. イーサネットでは,自分の送信パケットを自分でモニタリングすることで 衝突検知を行い再送をします. そのためイーサネットは,トラフィックが公称値の10Mbpsはなかなか実現出来ません. しかし,FDDIのトークンリングは,流れているトークンを確保したコンピュータしか データが送信出来ないので,混雑時でも安定してトラフィックが流れます.


3.2.3 ATM

 イーサネットもFDDIもデータ長は可変長となっています. ATM(Asyncronous Transfer Mode)では,こ のデータ長を固定する事によって高速化をはかっています. ATMではパケットではなく,53バイト固定長のセルを流します. 伝送速度は155Mbpsですが,最近では600Mbpsも使われています. セルは53バイトですが,このうち5バイトがヘッダーで,48バイトがデータ部です.

 ATMは,多くの大学関係が全学ネットワークとして採用したために, 試行錯誤を繰り返しながらもなんとか安定(安定とは1ヵ月に1度止まる事だと考える) に動いているようです.

 大阪市大の基幹部のATMなので,他の大学同様, 初期のいろいろなトラブルには遭遇しています. まあ,ネットワークの新しい技術は得てしてこんなものと考えて運用しています.

 FDDIも含めてATMやそれ以外の高速ネットワークは, 基幹ネットワークを構築する場合と, 高速性を活かした使い方があります. 後者の場合は動画のリアルタイム中継等の利用方法がこれからも考えられています.

 構内の基幹部のネットワークの場合は,建物間にネットワークを張る場合には イーサネットのメタルでは落雷の危険性があり, その意味でも光ファイバーを用いるFDDIやATMは(ほとんど)安全です.

 ATMでは仮想LANという使い方が出来ます. ATM網の中に仮想のネットワークを構築できます. 次回のIPアドレスの所で話をしますが, IPアドレスはネット部とホスト部に分かれます. このネット部が違うと別のネットワークになり, ネット部が同じだと,比較的自由に通信が出来ます. そのために,組織内での同じ部署の場合は同じネット部にすると便利です. 所が部署は同じでも,場所が分かれている場合には物理的に線を引かないと ダメなのですが,ATMの仮想LAN機能を使うと場所が離れていても 同じネット部が使えます.

 大阪市大の基幹部のATMもこの仮想LAN機能を使っているので, 飛び地の研究室も同じ学科ネットにしたり, 数箇所ある生協もネット部を同じに出来ます. 1つの部署等を1つのネット部に閉じ込めるのは, その中では自由にトラフィックを流せる事(Windows環境やMAC環境)や, セキュリティ的にその部分だけをきつくしたい場合には有効です.


3.2.4 電話回線とPPP

 電話回線でインターネットしたいという希望は以前からありました. いわゆるパソコン通信的な接続(ホストコンピュータにログインする) はあったのですが,IP的な接続は出来ませんでした. SLIP(Serial Line IP)と言われる技術がありましたが(まだあります), 24時間接続的には使えても, 間欠使用であるダイアルアップ型は難しいと言われていました.

 このダイアルアップSLIP的な接続を別の形で実現したのが, PPP(Point to Point Protocol)です. 今では個人対象の商用プロバイダとの接続には欠かせないものになっています. SLIPと違ってIPの文字がないのは,TCP/IPだけでなく NetwareのIPX等の上位プロトコルを複数サポートしています.

 商用プロバイダを利用される方は, PPP接続するためにユーザ名以外にパスワードが必要ですが, PPPでIP接続する場合には接続するためにパスワード認証が出来ます. また,接続の交渉(ネゴシエーションといいます)でパスワード認証が通ると IPアドレス等が自動的に付与されます.

 PPPでのパスワードの認証にはPAP(Password Authetication Protocol)と CHAP(Challenge Hnadshake Authetication Protocol)があります. PAPは普通のログインの手順をそのまま踏みます. 所が,この場合にはパスワードはそのままネットワークを流れてしまいます. それを防止するために,パスワードを流さずに認証して貰うのがCHAPになります. PAPとCHAPの両方使える場合にはCHAPを使って下さい.


3.2.5 CATV

 今,着目されているインターネット接続技術の1つがCATVを使ったものです. 利用出来るようになると, 月数千円程度で24時間インターネットが使えるようになります. CATVは基本的には,下り方向に多チャンネルを送り, ユーザはそこから1つを選択する事になります. そのため,片方向に同じデータを送る通信形態でした.

 この通信形態で,双方向でかつ異なるデータを流さないといけないわけで, 幾つかの越えないといけないハードルがありました. 特に大きいのは各家庭から昇り方向に上がってくる雑音です. 今までは下りだけを考えていれば良かったので問題ではなかったのです.

 同じデータしか流せないのは,イーサネットのバス型接続と同じなので, ユーザ側のケーブルモデムが自分宛てを峻別すれば良いし, 発信側もイーサネットのアイデアを使えば出来ます. ただ問題は,同時に100名が利用した場合は1つの回線を100人で 使っているのと同じなので速度が遅くなるのはしかたがありません. その意味ではOCNエコノミー等の専用線サービスと発想は似ています.

 CATV局の方はケーブルルータと呼ばれる装置を購入して, ユーザとのやりとりと,インターネット側の接続を管理運用する事になります. ケーブルルータや各戸に入るケーブルモデムの標準化等まだ問題は残っていますが, 月数千円でインターネット繋ぎ放題なのは魅力的です.


3.2.6 ADSL

 昨年度あたりから新しくでて来た技術が,各家庭に入っている電話回線を そのままインターネット接続にも使おうと言うものです. まだ幾つか方式があって,xDSLとも言われています. ADSLはその中の1つの方式で asymmetric digital subscriber lineの事です. 日本語ではデジタル加入者回線とか訳されています.

 各家庭に来ている加入者電話の回線のうち,上の周波数は利用されていないので, その周波数を昇りのトラフィックと下りのトラフィックの分けて利用し, 1.5Mbpsのような高速な通信を実現させようというものです.

 CATVと違って各家庭には1本ずつの線が来て,今までも電話ではそれぞれが 違うデータ(おしゃべり)を流していたので,技術的な問題は どれぐらいの線の長さが限界かという点にあります.

 この長さの問題にある程度の応えがでれば(電話局から2KM以内と 言われたりします),次の問題はトラフィックをどう捌くかです. しかし,この問題はCATVや他のネットワークでも共通の問題なので, このADSLだけで論じるわけにはいかないですね.


3.3 IPとTCP,UDP

 IP(Internet Protocol)とは名前の通りインターネットのプロトコルですが, 1つのIPアドレスを持つ計算機やネットワーク機器と もう1つのIPアドレスをもつものとを通信させる通信規則です. 厳密には1対1の通信以外に一斉放送のブロードキャストや グループ内の通信のマルチキャストもあるので, そのIPアドレスを扱う計算機やネットワーク機器を通信させる 取り決めと考えてください.

IPプロトコルの上位のプロトコルとして

があります. TCPは確立した通信をするためのプロトコルです. 信頼性の高い通信をするためのプロトコルと考えて下さい. 直観的には,それぞれのコンピュータやネットワーク機器がデータを送った場合は 他のマシンからのデータ受信の確認を待って次のデータを送ります. 実際にはプロセスとプロセスがインターネットを介して (組織内ではインターネットまで出ませんが) 話合うのに,互いにデータの授受を確認しながら通信をします. あたかも1つの通信路がプロセス間で確立するので 仮想通信路(Virtual Circuit)とも言われます. 信頼性を高めるために,次に取り上げるUDPよりは伝送速度は早くありません.

 それに対してUDPは相手に送ったデータの受信を確認しません. いわば投げっぱなしの通信です. 1つのネットワーク全体に放送的に知らせたいとか (いちいち受信確認を取っていると大変), データのチェックはアプリケーションのプロセスに任せて ひたすらデータを送りたい時に用います. 後者の場合はTCPでは確認で時間が掛かるので, 音声や画像のように大きなデータでリアルタイム性の必要なものに良く使われる. 最近のインターネット放送はこのプロトコルをよく使います.

 ICMPプロトコルはエラー処理のように所で使われます. IPパケットが何らかの理由で最後まで届かなかった時に 発信先に対して,届かなかった理由をつけてエラーパケットとして返します. 更にはこのプロトコルの問い合わせ機能をつかって ネットワークや計算機等の状態のチェックにも使われます.

 IP以降の細かな話しは次回にしましょう.


3.4 IP


3.5 TCP


3.6 アプリケーション層のプロトコル


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