「インターネット概論」の目次

4. ネットワーク・アプリケーション(3)

平成9年10月26日15時17分版

 10月と11月の2回でWWWの話をしたいと思います. WWWのシステムはこれからのソフトウェアのプラットホームであるという 議論もあるくらいですからとても大きな話になります. また多くの本がありますから, この講義では私なりの考え方も交えながら,ある種限定的な話をしようと思っています.


4.5 WWW(World Wide Web)

4.5.1 WWWとは

 WWWはWorld Wide Webの略で世界に張られた蜘蛛の糸という意味だそうです. WWW自体は多くの雑誌や本や新聞にこれでもかと言うばかりに取り上げられています.

 WWWを構成する技術にも多くのものがありますが, その中で中心になる技術の一つがハイパーテキストもしくは ハイパーメディアと言われる技術です. ファイルの内容がテキストだけの時はハイパーテキストと言い, 画像や音声が関係するがマルチメディアと言うわけでハイパーメディアとなります. この概念自身は新しいものではありません. 皆さんが本や雑誌や新聞等を読んでいる時に,分からない言葉や もっと調べたい事項があったら,別の資料を何らかの手段で調べるのですが, ハイパーテキスト/メディアでは, その対象となる言葉や事項に線が引いてあれば 解説や説明のファイルが存在してマウスのクリックだけで その解説や説明のファイルが表示されるものです.

 ホームページの中身であるHTML(HyperText Makeup Language)は このハイパーテキスト/メディアを記述する言語で, ファイルの中の言葉や事項から他のファイルを呼ぶ所をリンクと呼びます. WWWのシステムとして優れた所はこのリンクにインターネットを使った事で, ネットワークを越えて他の計算機のファイルにアクセス出来るようにした事です. もちろん,それぞれの計算機ではWWWサーバが動いている事が必要です. あるWWWサーバにあるホームページを見た時に,ある事項をクリック(選択)すると, リンクされた別のファイルが呼び出されるのですが, そのファイルが別の計算機にある場合は その計算機のWWWサーバが呼び出されてユーザが意識せずとも 違う計算機にアクセスしている事になります.

 このように説明すると電子メイルや電子ニュースの仕組みを 理解された方はWWWサーバの互いに呼び合う仕掛けも 同じような仕組みであると気がつかれるでしょう. ユーザからみると次に述べるWWWのブラウザーで世界の情報を取る事が 出来るのでWWWという名前をつけたと思います.

 ハイパーテキスト/メディアの概念と, インターネットの力で世界の情報が居ながらにして取得出来る事は すばらしい事だと思います. ハイパーテキストの概念を私が知ったのは1980年代の後半で研究も始めていましたが, こんなに早くこのような世界規模で実現するとは思いませんでした. 人は情報を体系化するのに分類の力を借り木構造または階層構造を使ってきました. ハイパーテキストではこの木構造を 更に一般化したネットワーク構造をさ迷う事が出来ます. この事はおそらく両刃の刃でしょう. 自由な発想をする時にはこのネットワークをさ迷う事は (更に自分でネットワークを作る事が出来ればもっと良いでしょう) 何か新しい発見を得る事になると思います. 逆に何かを探したい時はちょうど迷路に入ったような感じになるでしょう.

 今の所,多くの所でWWWサーバが上がっており, そのサーバのホームページの中は階層構造に近い構造をしているので 分かりやすいと思います. おそらく多くのWWWサーバを業種やテーマ等によって うまく分類して検索させるサービスも出て来ているので, この問題も解決するだろうと思っています.

 これからは各WWWサーバが行う電子的商取引とか情報提供サービスとか 仮想世界でのいろいろな試みがなされるでしょうが, これらは11月の講義の中で触れられればと思います.


4.5.2 WWWブラウザ

 WWWサーバで多くの組織が情報発信をしていますが, この内容をほとんどマウスのクリックのみで見るソフトウェアを WWWのブラウザーと呼びます. 最初はMosaic(モゼイクと言いましょう)というソフトウェアが便利に使われたのですが, 最近ではNetscape Navigator等の便利なブラウザーがいくつか出ています.

 このブラウザーはWWWサーバの内容を見るものだけではなくて, 多くの今までのインターネットのアプリケーションを 非常に簡単に使えるようにされています. その意味ではインターネットというばUNIXの難しい言葉 (私にはとても馴染みがあり分かりやすいのですが)を覚えないといけないのを, ちょうど駅で切符を買うように手軽に操作出来るような ユーザ環境を提供してくれています. UNIXやインターネットがプロの手にあったのを, WWWサーバやブラウザーであるやNetscapeやInternet Explorerは 素人の手にも扱えるようにしたと言う人もいます.

 ブラウザーはWWWサーバにある情報だけでなく, 匿名のファイルサーバにあるファイル群や今までに取り上げた 電子ニュースや電子メイルでさえも扱う事ができます. したがってブラウザーだけでWWWサーバの連係した世界だけでなく インターネットでの仕事の多くが出来るとようになっています.


4.5.3 情報共有のためのWWWシステム

 情報発信の部分がWWWサーバにはよく取り上げられていますが, それと同じぐらいに着目して欲しいのが情報共有のための使い方です. これは情報発信がマルチメディア的にも簡単に出来るのと, ユーザが操作の簡単なNetscapeのようなブラウザで情報を 簡単にアクセス出来る2点が組み合わされて実現できたものです.

 HTMLやいくつかの画像や音声のファイル形式による表現形式の統一化で ホームページ等の作成は比較的容易になりました. 情報発信する方も元データとして情報が蓄積出来, 加工も出来るので作成するほうも張合いがあるでしょう.

 情報を見るユーザとしても,操作環境が画面の上の ボタンやウィンドウのスクロールやマウスのクリック程度の習熟で良いので 小さい子どもは当然ですが, 問題の中高年も障壁が低くて楽になったはずです. 著者も中高年になったので良く分かりますが, ちょうど中学や高校の時の「数学」のように好きな人と嫌いな人が はっきり分かれる計算機は,好きな人からは大した事がないと思われても 嫌いな人からはやっぱり「むしず」が走るわけです. そのあたりを,計算機の操作環境をやさしくする事で解決をした ブラウザの役割は大きかったと思います. これで私も学内で学長にも事務局長にも使ってくださいと 言えるようになったと思っています.

 これからは情報検索をやさしくかつ高速にする検索エンジン (ハードウェアやソフトウェア)の研究や開発, まとめるという頭の活動と新しいアイデアを発想させる (導くという意味ではNavigateする)仕組みの追求がテーマになっていくでしょう. 前者の検索エンジンはハードウェアの高速化や並列化,分散処理化, また効率の良いアルゴリズム(解法)の発見や改善で進んで行くでしょう. ただ後者の情報をまとめたり発想する事は, 計算機やネットワークがこれほどになってない時まで (人類が表れてからですが)も,徐々に進歩していました. インターネットが出来たからと言って急速に進歩するとは思いません. しかし,世界中で同じ事のまとめが行われているので, その中から優れたものが生き残り,また最初はしょうもない発想でも, 皆で温めていてばあっと驚く発想も出てくるでしょう. それをまた我々は共有すれば良いでしょう. 発想がビジネスになるという点はありますが,,,


4.5.4 新しい広報手段としてのWWWシステム

 WWWシステムの特質の最後の点は, WWWサーバが情報発信すると言うので, ちょうどテレビや新聞やまた広告をイメージされる事は多いと思いますが, その点がWWWシステムではちょっと違う点です. 簡単に言うとテレビや新聞や広告は片方向であり, WWWシステムではユーザ(クライアント)がサーバにアクセスして始めて 情報が手に入る点にあります. その意味ではWWWシステムは従来のマスメディアの 考え方を変えるものだとも言えます.

 特にサーバ側に立って考えるとこれは良く分かります. ある情報(テキストや画像や音声)をサーバに載せて これをユーザがアクセスしたとすると, その情報が少なくとも1人に取り込まれた(見た)事になります. これはいくつかの点で興味があります.

  1. どの情報がたくさんアクセスされたか分かる. どのような情報がユーザにとって興味があるかがわかる.
  2. どの情報が同じ計算機から何度もアクセスされたか分かる.
  3. どのような情報が変化(更新)させればユーザが興味を持つかが分かる.

 今,3つの興味のある事項をあげましたが, 残念ながら現在の仕組みでは,1つの計算機からアクセスとしてしか記録されないので, 同じ人が何度も見たか,1台の計算機の複数のユーザがアクセスしたかは分かりません. それが(2)で「人」ではなく計算機と書いた理由です. これは良い点でもあり悪い点でもあります.

 良い点と言うのは,誰が(どの組織が)ある情報をアクセスしたというのは プライバシーに関係するので,細かなアクセス情報が記録に取れないのは プライバシー保護の意味では良い点だと思います. ただ現在の仕組みではどの組織が変な情報にたくさんアクセスするといった 情報が開示できます. もっとも,これも技術的にはユーザ側が逃げる手はあります.

 悪い点は最初に触れたようにサーバをビジネス等で運用する場合には, 個人情報まで手に入らないので, 積極的にアクセスしたユーザに働きかけ出来ない事でしょう.


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