「インターネット概論」の目次

6. 情報システムの構築(後半)

平成10年3月1日22時25分版
 2月の講義は,1月の「情報システムの構築」が半分までしか行かなかったので, その続きをする事にしました. 「管理」もいろいろ話したい事があるので,13回目が必要かもしれませんね. ではぐずぐず言わずに,この章を完成させましょう.

 6章を2つに分ける事にしたので,区切りのために「サーバ以下を後半としました. そのためサーバの部分もちょっと見直しておきます. おそらく6.9のネットワークの話しは少ししかできないと思います. その分だけSOHO的な話を増したいと思っています.


6.6 サーバ

 ここから3節はコンピュータ側の話になります. サーバとクライアントの話をそれぞれした後で, 6.8節でダブルサーバ構造である 3 tierモデルについて触れてみる事にします. 3 tierモデルといっても難しい話ではなくて(コンセプトは重要です) ホームページを良く検索している人なら知らず知らずのうちに利用している 考え方です.検索エンジンはほとんどこの形を取っているはずです.

 さてサーバですが, ここではインターネット概論なのでインターネットのサーバをまずは考えてみます. インターネットのサーバでは通常は上に書いたサーバ機能のうち

を基本と考えるようです. Name serverの話は講義の中でもそんなにしなかったはずです.

 この機能を1台のコンピュータで行なうのか,複数のコンピュータで分担させるかは その組織の判断です.ここで言う組織とは広い意味の組織で, 企業なら,企業そのものから,ある課や係といった単位 (大学だと学部とか学科とか研究室)の事です.

 Name serverやMail serverは1つの正サーバ以外に, 副サーバ(複数あっても良い)を設ける事ができます. WWWサーバも検索エンジンのような所は複数のサーバを用意して 同時に多くの人(WWWブラウザ)がアクセスしても応答が速くなるように対応しています. ここでいうサーバはソフトウェア的なサーバ機能ですが, そのサーバ機能を多くのサーバ機で分担させるのか, それとも1台の高速なサーバ機で対応させるのかは 情報システム構築者の腕の見せ所です.

 Mail Serverの場合で企業の場合は一旦企業全体のMail Serverで受けた上で, そのメールを企業内の各Mail Serverに配布する事が多いようです. これはセキュリティ的にも大事な事で,直接, 企業内のMail Serverをインターネットに晒さない事で アタックを受けないようにしています.

 Mail Serverの場合は複数のサーバを立ち上げて, メールを受ける優先度を設定させる事も大事になります. これは当該のサーバが何らかの理由(停電とかソフト的にハングアップした等) で止まっていても,他のMail Serverが動作しているので, とにかくメールは組織内まで届きます. 一般にメールの発信ではメールを出すサーバが,送りたいメールが届かないと 30分とか1時間(設定による)毎に再送信を試みるので, なるべく受けてやるようにするのがエチケットだと思います.


6.7 クライアント(端末)

 どのようなコンピュータ環境で仕事をするかは, それこそユーザが各自で判断される事なので, この講義ではあまり触れないでおこうと思います.

 それではなんなので私の場合を話しましょう.私の場合は,クライアントとして Windows 95が動作するパソコンを使っていますが, 主にはUNIXの端末的に使っています. 従って,気持ちはUNIX(というよりMuleと呼ばれる環境)となりますが, ユーザインターフェースはUNIX的なキー操作と Windows的なマウス操作と言った方がいいかもしれません.

 このようにしておくと,UNIXとWindowsの両方が使えるので, 両者の長所短所をうまく使えます. Windows系ではバグは多いのですが, WWWのブラウザを始めとしてソフトウェアの流通が早いので, バグやセキュリティホールに配慮しながら使うと便利です.

 なぜMACを使わないかと言う質問の答えは簡単で, Windows系の方がユーザが苦労するので, あえてWindows系を使っていれば, 学内での質問の答えられるだろうと言う管理者的な発想ですから, あまり普通の方にはお勧めできない意見だと思って下さい.


6.8 3 tier モデル

 3 tier モデルと書くとわかりにくそうですが, 3段階モデルと言った方がいいかもしれません. 通常はサーバ・クライアントモデル と呼ばれる関係で,クライアント(ユーザ:端末)がサーバを使って仕事をしますが, この3 tier モデルではサーバを2段構えで構成する事にします. と書くとわかりにくそうですが,client(端末)をNetscape Navigator等のような WWWシステムのブラウザと考え, Front-end serverをWWWサーバまたはホームページと考えると, Back-end serverはデータベースとなります.

 皆さんがyahoo等の検索エンジンでキーワードからホームページを探す場合には, 最初は検索エンジンのホームページをアクセスしているのですが, 「検索」ボタンを押したら,質問(query)がBack-end serverである データベースのサーバに飛びます. ここで大事な点は, ユーザは用意するソフトについてはあまり考慮しなくともいいことです. 基本的にはWWWシステムのブラウザがあれば良くて, ホームページを作成する場合には, 有力なWWWシステムのブラウザの事だけ考えれば良い事になります. もう1つ重要なのはWWWシステムのサーバも 普通に世に出ていて評価されているものを使えばいいだけです. 頑張るのはホームページ作成と,Back-end serverの設計でしょう.

 サーバの立場から考えると, 多くのアクセスがあるホームページには複数のWWWサーバを用意し, データを保存したり,高速に検索するサーバは 高機能なサーバを用意する事で, データの内容の一致性やバックアップのが効率的にはかれる事になります. 今のようにコンピュータの高機能化と廉価性が, ある部分は同時に(高機能で廉価なコンピュータ), ある部分は2つの方向に進化している段階では どのようにサーバ構成を考えるかは,難しいながらも面白い問題です.


6.9 ネットワークとネットワーク機器

 ネットワークやネットワーク機器の話しは, それだけで1回分ぐらいの分量になりそうなのでぼちぼち書き足したいと思います.


6.10 SOHO環境

 SOHOとは Small Office/Home Officeの事で, INSルータやアクセスサーバを売ろうと思っている企業が作った言葉のようです. 勤務形態としては「在宅勤務」や「サテライト・オフィス」が考えられますが, 通信形態としては「必要な時だけ接続する」形だと言う事もできます. そのように言うとモデムで接続するのと同じではないかという質問も来そうですね.

 しかし,SOHO環境と言うと解釈にも依りますが, 私はISDN(またはINS)電話を使って, ネットワーク機器もINSルータと呼ばれる機器で接続する形だと思っています. モデムを使った場合は,必要な時でもソフトウェア的に接続したり切断すれば 同じような機能を持たす事はできます.  

SOHO概念図

 上の図は大阪市大での教職員や学生が 自宅等から電話でアクセスするサービスの概念図です. モデムから電話(アナログ)を使ってアクセスしたり, ISDN電話のデジタル回線を一旦アナログ回線にする TA(Terminal Server)を使ってのアクセスが上部に書いてあります. 下の部分がSOHO的な使い方で, INSルータと呼ばれるネットワーク機器を通してISDN電話を通してアクセスします.

 SOHOもネットワーク的にはいろいろな見方ができます. まず,(アナログ)電話を使わずにISDN電話を使う利点ですが,

等でしょうか.

 インターネット技術が今でも進歩している中で, このSOHO技術もまさに日進月歩している所と言えます. まずはネットワーク機器の値段ですが, INSルータを取り上げても20万円したものが今は5万円ぐらいになっています. その分だけ売れているとも言えますね.

 電話も(アナログ)電話ではなく デジタル電話であるISDN電話になった事が大きなポイントです. 従来の電話は「音」の世界だったので,モデムのように速度等をあわせる (ネゴシエーションと言います)の必要がありません. また,ISDN回線は本質的に2回線(厳密には3回線)を1本の線で送っているため, 同時に2箇所に(から)接続できますし,場合によっては2回線分の128Kbpsが使えます. 2回線なので電話代は2倍ですが, INSテレホーダイサービスに入っていれば固定料金のまま(のはず)です. ネットワーク機器によっては,トラフィックが増せば自動的に2回線で流れ, トラフィックが減れば1回線になる機能もあります. もっとも,2回線同時に流すサービスは,受けるアクセスサーバにその機能があって, かつ許可していないとできません.

 INSルータの場合は,モデムのように意識的に接続しなくとも トラフィックが生じた時点で自動的に接続してくれます. もちろん,電子メールやWWWブラウザで必要になればPPP接続してくれますが, これはアプリケーションレベルからの接続といえるでしょう. 自動的に接続してくれるので,トラフィックがある時間切れれば切断もしてくれます. この機能は便利なようで不便な所もあります. 最初の問題点は,接続している相手の電話局(同じ地域(MA)か)にもよります. 3分10円(NTTの場合です)の場合には,頻繁に接続・切断を繰り返されると, 接続で課金されるので余計にお金がかかる事もある点です.

 もう1つの問題点はコールバック機能です. コールバック(call back)は,相手に電話を掛けた場合に, 掛けた相手が一旦切断して逆にこちらに電話を掛けて接続してくれる事です. この機能はアクセスサーバのとっては,信用できる電話番号に電話をするので セキュリティ的にも良い機能です. 電話番号は認証機能としてもすぐれた機能です. このコールバック機能は,先ほどINSルータ接続の場合は,切断時に トラフィックが相手方から生じた時に,相手方から電話を掛けて来て 接続が再開されます. なんだいいじゃないかと言われそうですが, 掛ける方がテレホーダイサービスを受けている場合は, せっかく固定料金なのに相手が電話料金を払う事になるので無駄になってしまいます. 少しお金に拘りましたが, 今のようにいろいろな通信手段を個人(家庭)でも使えるようになったので, 1分幾らとか,1時間幾らとか,月幾らかと考える時代になったようです.

 SOHOの項が長くなったので,残りの部分は次項に回しましょう.


6.11 家庭内LAN(家庭内乱?)

 自宅からプロバイダにアクセスする場合を考えてみます. 皆さんは気にしていませんが, このサービスは普通は端末型サービスと言われるものです. PC(端末)をプロバイダにPPP接続すると,プロバイダからIPアドレスを付与されます. もちろん1つだけです. このIPアドレスはグローバルIPアドレスが普通ですから, IPアドレスを付与された時点で,インターネットの仲間入りしています. 世界の数千万台と言われるインターネットに接続されたコンピュータの 仲間入りをします. ただ,このIPアドレスは一時的なものなので,プロバイダとの接続を切った時に プロバイダに返す事になります.

 一方,自宅やサテライト・オフィス(小さな出張所)では複数 (自宅で複数はまだ一般的ではないですが)のコンピュータがあるので, 端末型接続では1台しか接続できない事になります. 端末型接続ではなくネットワーク間接続(LAN間接続と言います)の場合は, 複数のコンピュータが接続する事が前提なので(SOHO概念図の下の方), IPアドレスが1つという問題はありません.

 最近,この端末型接続の弱点を補う技術がでて来ています. 1つはNAT機能で,貰ったIPアドレスを適当なIPアドレスに変換する機能です. プロバイダから貰ったIPアドレスではなくて, 自分のIPアドレスを使いたい時に使います. 例えば,複数のプロバイダ(商用プロバイダ接続と会社とか)に 接続している場合でも, 自分のコンピュータのIPアドレスを変えなくとも大丈夫です.

 このNAT機能に加えるにIPマスカレード(masquaradeは仮面の意)機能があります. IPマスカレード機能は,複数のIPアドレスを1つのIPアドレスに見せる技術です. この技術の説明は, 今回の講義でTCPの説明まで入(はい)れなかったので難しいのですが, 簡単に言うと,複数のコンピュータで動いているプログラム(プロセス)を あたかも1つのコンピュータで全てが動いているように見せる技術です. 送り出す時は,1つのIPアドレスに載せて送りだし, 送られて来た時は,どこコンピュータ(IPアドレス)かを覚えているので 最初に送り出したプログラム(プロセス)に送り返してくれます.

 従って,端末型接続であっても,NATとIPマスカレード技術を使うと, あたかもLAN間接続ができます. この項の最初に話したように,LAN間接続のサービスで接続していたり, OCNエコノミーサービスのように,自宅を専用線で24時間接続して, しかもインターネットサービスを受ける場合は 問題なく複数台のコンピュータを自宅でもインターネット環境にする事はできます. しかし,通常のダイアルアップ接続(PPP接続)の場合で端末型でも これらの機能で自宅全体がインターネット環境にできます.

 自宅でLANの配線をする場合は, 10BaseTか10Base2のイーサネットを使う事になります. 前者の10BaseTは,ISDN電話で使う線と同じ8線式(通常の電話は4線式)で, ISDNとは使う端子番号が違うだけです. インターネットが好きな方で, 自宅を新築される方で自宅をLAN(インターネット)環境にする人が増えてきました. 新築でなくとも配線をする事は可能なようです. 私も自宅のマンションの部屋をLAN環境にしています. 居間にネットワーク機器のコーナがあり, 2つの子供部屋に10BaseTの線が延びています.

 家庭の情報環境構築の1つの手段が今 話したようなインターネット技術によるものです. しかし,これが一般的になるかはまだ分かりません. 電力線(100Vのコンセント群)を使って情報を送ろうという試みは 以前から行なわれています. しかし,今までの講義で話したように, LANのネットワークを使うか電力線のネットワークを使うかは, 上位のプロトコルをTCP/IPにすれば本質ではなくなってきます. どちらでもできるという意味です. 電力線の場合は,トラブルが隣近所まで影響する事があるので, 実際の運用に供するには, まだ幾つかのハードルを越えないといけないような気がします.

 しかし,インターネットもここまで進むと, 家電インターネットの話がでて来ないと嘘ですね. 実際にはインターネット・テレビという商品がありますが, 見事にこけているようです. 私自身は冷蔵庫をインターネットに接続し, 買ったものは必ずバーコード入りなので入庫や出庫の際にバーコード・リーダを 通せば在庫管理ができ,近所のスーパーとインターネット的に接続していれば 1週間の献立を考えながら,足りないものとその安売りの日を教えてくれるでしょう.


6.12 モバイル・コンピューティング

 モバイル・コンピューティングとは動きながら(移動) コンピュータを使うというような意味です. そのためにはまず コンピュータが持ち運びに便利なような形や重さでないといけません. ここでは,コンピュータはそのようなものであると仮定したうえで, 通信的な話を取り上げましょう.

 移動しながらなので無線を使うのが普通ですが, 場合によっては最寄りの公衆電話に携帯端末を繋ぐ事もあるでしょう. そのような場合を除くと (私の場合は寄った先の情報コンセントに10BaseTのイーサネットを差し込む事もある) 通常は無線を使います.

 無線をインターネットで使う場合には以下の3つの形態があります.

固定型や半固定型も興味のある所ですが,モバイル・コンピューティングの項なので 移動型を考えます.前振りが長かったのですが要するに で通信する事を考えてみます.

 (デジタル)携帯電話では,9600bpsの通信ができます. この速度は2昔前の通信速度ともう言えるのではないでしょうか. しかし,携帯電話は日本の中でかなりの部分で届くようになっているので, 私の感覚では「何処でも」いんたーねっとが出来る便利な通信手段と言えます. 新幹線の中の場合は「トンネルでは使えない」問題はありますが, 使えるので結構便利に使っています. 問題は電話料金ですね.

 一方,PHS電話は昨年4月(1997年4月)から32Kデータ通信サービスを始めました. デジタルの32Kbpsのデータ通信サービスをPIAFS形式で行なうものです. 32Kのうちヘッダー部があるので,実際のデータ部は29.2Kになるため, 29.2Kbpsという説明も出来ます. 私のサービス開始時からモニターになっており, いろいろな場所で使ってみました. 問題はPHS電話自体が公衆電話のコードレス電話部といった感覚なので, 電話の届かない所が多くて「何処でも」が欲しい人には辛いでしょう. 市内の料金が公衆電話並なのは嬉しいので,私の場合は常に携帯電話用と PHS用のカードを持参していて,TPOを考えながら使い分けをしています. PHSの場合は電波状態が不安定な時もあるし, 窓際では電波が届いても室内では使えない事があるので, 電波増幅中継装置を持ち歩かないといけないとは思っています. こう考えると鞄には沢山のカードやコードを入れておかないといけないので まだまだですね.

 しかし,数年前には併せて5Kg程度の携帯パソコンとモデムを 東京出張のたびに運んだ事を考えると隔世の感がしますが, まだまだ携帯パソコンも通信手段も進歩が見込まれるので楽しみです. 特にPHS電話は構内で使うと,構内利用では料金が無料なので 新しい使い方ができるものと思っています.


Name Server

 フルドメイン名(mediasv.media.osaka-cu.ac.jpのような)に対応する IPアドレスを返したり,逆にIPアドレスに対応するフルドメイン名に返します. 前者を「正引き」,後者を「逆引き」と言います. Name Serverは問い合わせを受けると, どんどん上位のName Serverに問い合わせをしていきます. 上位の言うのは,mediasv.media.osaka-cu.ac.jpの場合なら

の順で上位になります. 上の場合なら,最初の2つは大阪市大の中のName Serverが責任をもって (必ずしもそうでなくても構いませんが)問い合わせに対する返事をします. この責任をもつName ServerをPrimary Name Serverと言います. インターネットであれ,組織内のイントラネットであれ, あるドメインを構成する場合には必要なサーバです.

 最後の「.」はインターネットそのものを指します. 現在,10個ぐらいのName Serverがこの役目を受け持って 問い合わせに対する負荷の分担をしています.


ISDNとINS

 ISDNとは(Integrated Service Digital Networks)の事です. 国際的に通用する名前だと思ってください. それに対してINSはNTT的な呼び方で,INS64ネットとかの表現をします. INS64ネットを引くと,64Kbpsが2本と16Kbpsが1本の線を引いた事と同じになります. ISN1500ネットというのもあって, このネットの場合は64Kbpsが23本と16Kbpsが1本の線が1本の光ファイバの中に 入って届きます.


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