大阪市立大学の歴史
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あとがき198 本書は、2007年3月に刊行された『大阪市立大学の125年:1880〜2005年』(大阪市立大学125年史編集委員会編集)を改訂したものである。同書は、大阪市立大学125年史の編集過程で、学生向けにわかりやすく大学の歴史を紹介する本がほしいという意見が高まり、大学教育史を専門とする飯吉弘子(大学教育研究センター准教授)と125年史編集小委員であった中瀬哲史(経営学研究科教授、専門分野は経営史)の二人の労をわずらわすことよって刊行された。執筆分担は、「はじめに」からⅣの1までが飯吉、Ⅳの2から「むすび」までが中瀬である。 本学には、1980年代に編集・刊行された『百年史』など、大部な大学史は存在したが、わかりやすい大学史の小冊子はなかったので、『大阪市立大学の125年』の評判は大変良かった。毎年、新入生にも配布され、自校史教育にも活用された。しかし、年数を経るとともに、「125年」という表題が時代遅れになり、挨拶文を頂いている学長も交替した。また、この間には、2006年4月の公立大学法人移行という大きな組織変革も行われた。こうした事情を反映して、今回の『大阪市立大学の歴史:1880年から現在へ』となった次第である。改訂されたのは、主には、法人化以後の部分を取り扱った第Ⅶ章である。 この冊子では、大阪市立大学の歴史が大きな河の流れとして描かれている。戦前、それぞれの時期に源泉が形成された4つの源流が、戦後の教育改革の中で1つに合流し、現在に至る、という構図である。この見方は、本書が初めて提示したものである。というのは、ある世代以上には、大阪商科大学が本流である、という意識が存在していたからである。新しい見方にどのような反響があるか、少しの不安はあったが、実際には異論はほとんど聞かれなかった。若い世代の執筆者によって提示された大阪市立大学の新しい大学像が定着する時代になっていたのである。 少子化時代を迎え、日本の大学は大競争時代に入り、それぞれの大学が個性を打ち出す必要に迫られている。しかし、受験生は、受験偏差値への関心は高いが、自分が志願した大学がどのような大学であるのか、十分な情報なしに入学してくる。そこで自校史教育の役割が期待されるのである。新入生の皆さんあとがき

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