大阪市立大学の歴史
202/220

188資料見ないところである。 家政(学・脱)部は食品栄養学、被服住居学、児童および社会福祉学の3部門に分つて、それぞれ専門科学の研究・教育を行うことを目ざすものであり、人々の日常生活、とりわけ家庭生活に縁の深い学問の領域を開拓し学生をしてその方面の専門的知識を学修せしめることを主眼としている。家政学は理学、医学、心理学、社会学、経済学、等々の諸科学を基礎とすることによつて初めて成果を収め得るところの科学であり、したがつて、綜合大学の内部においてのみ家政学の名に値いする研究および教育は可能とされるわけである。大阪市大における家政学部の目標とするところが、他の単科大学的な女子大学における家政学科又は生活学科の場合とは趣きを異にするものであることも、ここに述べたところからも了解し得られるであろう。 家政学部は大阪市立女子専門学校を基礎として発足したものであるが、生活科学研究所と交渉するところが甚だ深く、実に茶珍部長は多年同研究所の所長として活動を続けて居られる。同研究所は40数年の歴史を有し、衣食住に関する、また都市の生活環境に関する幾多の研究実績をあげているが、家政学部は人的にも物的にもこれと密接な連絡をたもちながら研究および教育を行うことになつている。 家政学部はその任務を達成するために有力な教授をむかえて教授陣の充実をはかつているが、その中に女性の教授、助教授が相当数見出されることは際立つた特色となつている。学部の性質上おのずと女子の学生が過半数を占めているけれど、男子の学生の入学した者もかなりの比率を示している。家政学部は単に高い家政学的教養をそなえた人々を養成することだけを目的とするものではない。卒業者が家政学に関する教職に就くに至るものも多いであろうし、そのほか種々の職域において社会的に活動するに至ることも予想される。たとえば、食品栄養部門の卒業者は高級の栄養士として資格をもつべく、また食糧工場において栄養食品を製造、研究に従事し得る能力をもつているであろう。さらに被服住居学の方面の卒業者はデザイナーとして活動する能力を、児童、社会福祉部門の卒業者は保母などとしての実務のほかに社会事業の方面の職域に活動する能力をそなえているであろう。(おわり)付記  あまり長くなつたので、来る4月から開設が予定されている商、経、法文の3学部の第2課程(夜間部)のことや、一般公開講座のことや、一般市民への図書館の施設利用の提供のことなどに言及することを差控えた。またやがて開設される予定の医学部についても説明をはぶく外はなかつた。

元のページ  ../index.html#202

このブックを見る