大阪市立大学の歴史
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146Ⅶ 21世紀を迎えて奮闘する大阪市立大学Ⅶ 21世紀を迎えて奮闘する大阪市立大学(2000年〜)―公立大学法人としての船出―1.公立大学法人化なぜ、大阪市立大学は公立大学法人化したのか 21世紀を迎え、大阪市立大学は、日本の大学政策の大転換、大学に対する社会からの大きな期待のなかで、組織形態を変更した。2006(平成18)年4月1日より公立大学法人に移行したのである。大阪市立大学も従来は大阪市の1つの部局であったが、市から独立した法人となった。市との関係で大きく変わった点は、従来は「直営」とはいいながら、「大学の自治」という慣行もあって、基本的な方向などについても市側から問題提起されることはまれであった。法人化後、市は6年という期間を単位として大学との協議の上で、設置者の責任として大学が達成すべき目標を設定し、大学はそれを受けて具体的に実施計画を策定し、市はそれに対して必要な運営費交付金を支出するという構造に変わった。市との関係は制度化され、明確になったとも言える。 法人化は、大学史上、大きな制度変化であったが、その背景には次のような事情があった。 第1に、高等教育政策の飛躍的な変化があった。1990年代以降、日本の大学政策は大きく変更されてきた。第6章で述べたように、1991(平成3)年6月大学設置基準が大綱化された。その後、1998(平成10)年10月大学審議会答申 「21世紀の大学像と今後の改革方策について」が公表され、「競争的環境の中で個性が輝く大学」像が強調された。そこでは、「知」の再構築のために、①課題探求能力の育成とそれを実現するための教育研究の質の向上、②学部3年での卒業認可や大学院修士課程1年コースの認可等教育研究システムの柔構造化とそれを実現するための行財政制度の弾力化、③学長のリーダーシップのもとに責任ある意思決定と実行を可能とする組織運営体制の整備、④自己点検・評価の実施、第三者評価の導入による多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、が述べられた。なお、大学等の入学定員の全体規模を積極的に拡大せず、大学等の新増設の認可は今後とも抑制的に対応する

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