大阪市立大学の歴史
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1はじめには じ め に はじめにまず、いくつか質問をしてみたい。 大阪市立大学らしさとは何か? ――これは、本書全編を通して、その答えをそれぞれに探してみてほしい問いである。 現在当たり前のように呼んでいる「大おおさか阪市しりつ立大だいがく学」という大学の名前であるが、その名前にはどのような意味があると考えるか? ――素直に読めば、「大阪市」が設置・運営している「大学」と読むことができるだろう。(注:現在は公立大学法人大阪が設置・運営しているが、詳しくは本書Ⅶを参照。)  しかしこの本では、「大阪市立」の「大学」というとらえ方だけでなく、皆が何気なく当たり前のように使っている「大阪市立大学」という名称の、「大阪」「市立」「大学」という3つの単語には、それぞれ大きな歴史的背景と意味があるのではないか、という仮説を提示したい。それまで当たり前に単なる呼称として使っていた「大阪市立大学」という大学の名称の背後にある、「大阪」の「市立」の「大学」として、現在、存在していることの意味を、この本を読みながら共に考えてみてほしい。 そもそも「大阪市立大学」はいつできたのだろうか。 ――「大阪市立大学」という名称で、現在に近い形、すなわち複数学部を有する総合大学として成立したのは、第2次世界大戦後の1949(昭和24)年のことであった。 しかし、戦後、何もないところから5つもの学部(商・経・法文・理工・家政学部)を持つ大学が突然にできたのだろうか? 戦後の大阪市立大学のもとになる教育機関は戦前になかったのだろうか?  ――これらの問いに対する答えは、いずれも否である。戦前から、そのもととなる教育機関が存在し、それぞれに熱心に教育に取り組んでいた歴史が

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