はじめに


 本学は、建学以来大阪市と市民、同窓生の支援の下に一世紀余りの歴史を積み重ね、国立・私立大学にない特色をもつ、すぐれた公立大学として世の評価を得てきた。

 しかし、世紀の変わり目を前にした今日、激しい社会変化や学術・教育の進展の中で、本学も多くの問題・課題に直面することとなり、来世紀における変化を見通した大学づくりの方針を確立することが、大学の内外から強く求められてきた。

 これに先立ち、本学は、昭和60年(1985年)10月、学舎整備など大学の将来方向に関する構想をまとめた「大阪市立大学マスタープラン・基本構想」を策定し、さらにこの構想を受けて、21世紀に至る大学の改革・整備に関する長期計画として、平成元年(1989年)3月、「大阪市立大学基本計画」をとりまとめた。その後、平成6年(1994年)6月には新しいキャンパス整備と関連して、一部新たな内容を盛り込む形で「大阪市立大学基本計画[改訂版]」が策定され、その中に掲げられた新しい都市型総合大学の理念と大学づくりの目標に基づいて、学内では現在、各種の改革と施設整備が着実に進行している。

 しかしながら、現在大学を取り巻く環境の変化は激しく、基本計画の一部新たな見直しが必要であること、さらに加えて平成元年(1989年)の「大阪市立大学基本計画」や平成6年(1994年)の「大阪市立大学基本計画[改訂版]」は主として、計画の基本をキャンパス整備などハード面に置いており、制度・組織・運営などソフト面に関しては必ずしも踏み込んだ検討がなされていなかった。

 また、全国の主要大学において大学院研究科の再編と拡充が進行しており、大学院に軸足を置く大学院部局化の動きや、大学の理念、目標に基づく大学づくりの実績を大学自らが厳しく評価する自己評価や、大学の社会的責任のあり方が問われている。

 そうしたなかで、本学は、研究や教育上の特徴を何に求め、それを実現するための大学経営のあり方は、現状を踏襲することで充分か否か、真摯に考えなければならない時期にきている。

 結論から言えば、研究・教育面で全国の主要大学と比肩しうる程に先導的役割を果たしてきた本学は、その質的水準を今後も維持継承する大学づくりを目標とすると同時に、公立大学としての特徴を発揮することが求められている。

 わが国では、大学院研究科の再編を契機にして、大学の3層構造への分化、すなわち、

といった3層構造への分化が進行しつつある。

 120 年の伝統と高度な研究・教育機能を遂行してきた本学は、第1のグループに属する大学づくりを進めなければならない。さらに、設置者である大阪市の学術・文化の中枢拠点として、都市の様々な機関と連携し、都市が抱える現実問題の中に積極的に学問創造の場を見い出すなど、新しい都市型総合大学の基盤づくりが期待されている。大阪市立大学固有の都市型総合大学の建設に成功してはじめて、本学が21世紀に輝く存在となる。

 今回の改訂では、この点に充分配慮して基本計画検討委員会において、平成11年(1999年)4月以来、現行基本計画の点検・見直しを行ってきたが、ここにその結果を「第三次大阪市立大学基本計画」[平成12年(2000年)10月]として示すこととする。「第三次」とした理由は、平成元年(1988年)の最初の基本計画策定から数えて今回が三回目であり、改訂版や再々改訂版などと呼ぶ紛らわしさを回避するためである。

 本計画は、西暦2010年ごろまでの約10年間を計画期間としており、「I 計画の背景と本学の将来像」では、基本構想の趣旨を発展させながら計画の背景・理念・目標像を示し、「II 基本計画一大学づくりの目標」では、来世紀への大学づくりの五つの大目標の下で、教育システム、研究システムのあり方を設定し、「III 大学経営の確立と計画の実現」では、目標実現への体制・条件の整備について記述した。

 本学は、この計画を指針に、全学の協力によって、学問の発展と社会の期待に応える創造的な大学づくりを進める。