理学部
Faculty of Science
自然の何故かを問う
-地の底から宇宙の彼方まで-

Faculty of Science

金嵜浩香 数学科 4回生

◇中学でも高校でも良い先生に恵まれて数学を好きになり、数学科に入りました。
◇専門は代数学の環論で、「群・環」というものの内部構造を研究しています。環論は「行列」を体系的にまとめたものです。高校の数学では、3次以上の式を因数分解できるかどうか判定するには実際に方程式を解いて見ないと分からなかったけど、現代数学で考えると簡単に判定できます。これまで考えても見なかったようなやり方を学んでいます。
◇市大は学情をはじめとして、勉強する環境が整っています。学科の先生はみんな親切で気楽に質問できます。
◇高校生に定理の成り立ちを教えたり、一緒に数学を考える時が楽しいです。教員になって数学の面白さを伝えたい。


■自然を正しく理解する視点、それは理学に始まる

120億年もの昔、大爆発によって誕生した宇宙。全ての物と、全ての事に始まりがあったのです。想像を絶する時間を経て、宇宙は複雑多様な現在の姿に進化しました。暗黒の宇宙に浮かぶ青い水の惑星、地球を人類が見たのは、わずか40年ほど前のことです。古来人間は、畏怖と畏敬の念をもって自然と対話してきました。「何故?」「一体どうなっているのだろう?」という問いかけは人類だけの知的活動であり、人が言葉をもったときから始まったのでしょう。自然に対する素朴な疑問に始まり、人類は自然を理解するために観察と思考を積み重ねてきました。しかし、人間は自然についてまだほんの少ししか知りません。自然の不思議を問い、考えては悩み、自然の成り立ちを一つずつ解き明かすのが自然科学です。

ニュートンの万有引力を初めとして、人類は複雑な自然の仕組みの奥底にある規則性、つまり自然法則を見出してきました。それらは科学に携わった人々の苦悩の産物です。こうして花開いた自然科学とは、自然法則をよりどころとして多様な現象を説明し、物語として綴ることだと言えます。真理の探求によって構築された現代科学は、自然を正しく理解するための目を与えてくれます。

■理学には大切な使命がある

私達の体の臓器は、自分がその構造を知らなくても、機能を意識していなくても、立派に働いてくれます。その巧妙な仕組みは、生命が誕生してから37億年、生きるために培われた自然の賜物です。自然は微妙なバランスを保ちながら、見えない速さでゆっくりと進化しています。ところが、かけがえのない地球自然を何度も破壊するだけの能力を現代人は持ってしまいました。宇宙の宝物・地球自然を破滅から守り、次の世代へと引き継ぐには、自然を正しく深く理解する必要があります。理学は今、大切な使命を担っています。

■付属植物園(大阪府交野市)

総面積約25haの敷地に国内外の4,000種以上の植物が育成されており、大規模な「遺伝子プール」となっています。特に日本産樹木の収集に力をいれ、日本に自生する樹木約600種のうち約450種を育成し、日本の代表的な11の樹林型を再現しています。これらは貴重な研究資料として国内外で利用されています。また一般市民や教育機関にも開放され科学知識の普及にも役立っています。

■附属宇宙線研究所(岡山県備前市)

研究所は本学理学部に置かれ、備前市三石のJR山陽本線・旧船坂トンネル内に地下宇宙線観測所が設置されています。地下にはミュー粒子観測装置、地上には空気シャワー観測装置群を設置しています。これらの装置を用いて空気シャワーの連続観察を行い、ミュー粒子を利用した高エネルギー宇宙線物理を研究しています。

学部に関する Q & A

Q.
理学研究の面白さは何ですか?
A.
理学は何時でも何処でも通用する普遍性を追求します。誰もが認める形に磨かれ、確立された法則に基づいて自然を説明し、言葉の世界に写し取るのが理学です。自然の法則性を理解すると、自然を見る目が新しくなり、新たなアイデアが生まれます。誰も知らないことを自分で発見できるのが理学研究の最も面白いところです。自然と対話しながら、自分の世界を創造する、発見に満ちたロマンの学問です。

Q.
理学研究は何の役に立ちますか?
A.
自然の真理を探究する過程は、混沌とした中から形を取りだして表現する芸術に似ています。しかし理学の結論はつじつまが合っていなければなりません。理学は科学技術の基礎であるだけではなく、人間や自然や宇宙についての正しい考え方を提供します。理学の役立て方は人や社会によって異なります。「役に立つ」ことの意味も、科学者が考えて行かなければならない問題です。

Q.
卒業後はどのような進路がありますか?
A.
過半数の卒業生が大学院に進学して、より高度な学問研究を目指します。科学的な思考力と実践力は21世紀の社会に貢献することでしょう。各種製造業、官公庁、教員に加えて、ソフトウエア、報道、出版など情報や通信産業からの求人も増えており、卒業後の進路は広範です。豊かな感性をもって多様な問題に対処できる人材を現代社会は求めています。卒業後はあらゆる分野で活躍できるでしょう。


授業科目・講座一覧
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理学部学科案内

■ 数学科

自然界のあらゆる所に数理的な構造が潜んでいます。その探求の中で数学は成長し、現在の姿になりました。その現代数学の基礎概念を修得することを目標とした教育を行います。微積分と行列、群や位相といった基本的事項を自分の思考の道具とするまでじっくり時間をかけ、さらに特別研究における教員との真剣な議論を通して、個性を生かし自由に考えること、アイディアを実現する過程を自ら歩むことの悦びと大切さを学びます。

数理構造論
代数系、表現論、数論、多様体論、位相幾何学、情報数学
数理解析学
複素解析学、確率論、応用数学、大域解析学

■ 物理学科

自然界を支配する基本的な法則を物理学の両輪である理論と実験の両面から学びます。一貫したカリキュラムにより、基礎の古典物理から現代物理に至る専門知識を学び、最先端の研究を通じて論理的な思考力を養い、その研究方法の修得をめざします。

基礎物理学
素粒子論、相対論的重力理論、原子核物理学、流体・プラズマ物理学
宇宙・高エネルギー物理学
超高エネルギー宇宙粒子物理学、高エネルギー物理学、宇宙・素粒子実験物理学
物性物理学
超低温物理学、光物性物理学、量子構造物理学、素励起物理学

■ 物質科学科

既成分野(物理・化学・生物)の枠を越えた分野横断的な視点と方法論で、物質の理解と新物質の創成を目指します。新しい量子的物性現象を示す物質を創り出し、その性質を実験と理論の両面から明らかにします。また、生体機能を含めた高度に機能制御された分子・物質を設計、合成し、その機能を解明します。21世紀の物質科学研究を担う人材を育成します。

量子物質科学
量子物性学、電子物性学、量子機能物質学
機能物質科学
物質設計学、物質変換学、生体物質学

■ 化学科

生命から電子材料に至まるで、この世はまさしく色々な分子の組み合わせから成り立っています。このような分子を自由自在に扱うのが化学という学問です。国際的で自由な雰囲気の下に、新しい機能を持った超分子や有機・無機化合物の合成、人工放射光・レーザー化学、量子分子素子開発などの先端的化学を学びます。

分子有機化学
有機合成化学、物理有機化学、生物有機化学
分子無機化学
機能合成無機化学、分子認識化学、生物無機化学、分析化学
分子相関科学
分子物理化学、レーザー化学、巨大分子生命科学

■ 生物学科

生物学の大きな目標のひとつは「生命」の本質の理解にあります。急速に進展する分子・細胞レベルの研究により、生命を支える基本的な仕組みが、また一方では、個体や生態系レベルの研究で、生命が多様性を維持する仕組みが明らかになりつつあります。生物学科では、遺伝子やタンパク質を対象とした分子生物学・生化学、細胞や器官の分化、成長、機能を対象とした発生学・生理学、動植物の個体や個体群を対象とした分類学・生態学の広範な分野についての教育研究を通して、生命現象の総合的な理解をめざしています。

生物分子機能学
代謝調節機能学、生体低分子機能学、生体高分子機能学
生体機能生物学
動物機能生物学、植物機能生物学、細胞機能学
自然誌機能生物学
動物機能生態学、植物機能生態学、情報生物学、植物進化適応学

■ 地球学科

地殻を中心とする固体地球の総合的理解を目指し、鉱物単位から全地球規模までの広範な対象について、基礎的・応用的な教育研究をしています。このような研究教育活動を通して、人類の活動や生存条件と密接に結びつく現在の地球環境の把握と未来の予測に貢献しています。

環境地球学
人類紀自然学、都市地盤構造学、地球情報学
地球物質進化学
地球物質学I、地球物質学II、地球史学


大学院
理学研究科
●数物系専攻●物質分子系専攻●生物地球系専攻
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見えないものを見る

理学研究科とはどんなところ?

大学院では最先端のテーマが与えられ、研究室の人達と共に自然界の謎を解明するために日夜奮闘しています。教員と大学院生は対等の立場から未知の課題に取り組みます。苦労の末に見えないものが見えてきて、真理に向かって一歩前進するとき、科学研究ならではの感動を味わうことができます。自分で発見する面白さと、自然を科学的に理解する素晴らしさは、やはり実践してみなければ分かりません。理学部では多くの人が大学院に進学しています。

理学研究科は生まれ変わりました

現代の先端の学問領域の変化に対応し、また、21世紀の社会に広く貢献できることをめざして、研究科全体の再編を1998年4月に行いました。その結果、数学、物理、化学、生物、地質学の5専攻が広領域化され、数物系、物質分子系、生物地球系の3専攻にまとめられました。同時に、数理科学、先端材料科学、環境科学の学際的分野も設けられました。学部3回生から、前期博士課程に入学できる「飛び級」や、優れた研究業績をあげた大学院生は、修了年限を1-2年短縮して学位を取得する制度もあります。また、社会人入試、推薦入試などを通して、多様な人材を受け入れています。

大学院修了後の進路

本学の理学研究科は、全国にさきがけて最も早く設置された研究科の一つで、優れた業績をあげ、次世代に対応できる幅広い視野と研究能力をもつ人材を輩出してきました。最近の10年間を見ても約220名が博士号を取得し、その約4割は大学教員として全国で活躍しています。また、国公立研究所や高等学校、高等専門学校の教員として活躍している卒業生を加えると、6割を超える者が研究、教育関係の仕事に携わっています。民間企業等で活躍する卒業生も多く、その能力が高く評価されています。




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