狭心症において心筋虚血部位(血流が低下した部分)の検出は、その後の治療方針の確立に非常に重要です。
また、心筋梗塞後の梗塞部位(壊死に陥った部分)に生存心筋があるかないかも、梗塞後の患者の予後を
大きく左右します。これらの虚血部位や生存心筋の有無の評価は、従来「運動負荷心筋タリウムシンチグラフィ」
という造影法によって行われてきました。タリウムは心筋の血流を映し出す元素で虚血部位や心筋梗塞部位
には取り込まれません。しかし生存心筋があれば遅れて取り込まれるので、その影を認識できるという仕組みです。
ただしこの方法には、検査料が非常に高価であるという問題がありました。 最近は「ドブタミン負荷心エコー法」 によって、心筋虚血や生存心筋の有無を、心エコー図上の壁運動の変化として検出することが可能になっています。 ドブタミンは心筋の収縮力を強める薬物で、心筋収縮を高めることによって心筋の酸素需要を高め、心筋虚血部位や 生存心筋がある場合、心臓の壁運動を変化させます。 |
この検査法は心筋タリウムシンチグラフィに匹敵する診断精度を
持つと同時に、ベッドサイドで施行でき、かつ経済的な方法です。最近の報告では、この検査法で従来の検査では
得られなかった新しい効果が得られつつあり、日常臨床の最前線に登場しようとしています。 さらに最新の機器として、ポジトロンエミッションCT(PET)が生存心筋の判定に利用されつつあります。 心筋では主に脂肪酸代謝と糖代謝の両方でエネルギーを得ていますが、虚血心筋ではエネルギー源のほとんどを 糖代謝に依存しているので、正常心筋に比べて虚血心筋では糖代謝が盛んになります。そこでPETでは糖代謝を 映し出す特殊な元素を使用し、糖代謝が通常より上がっている部分を知ることによって、血流の低下した虚血領域を 特定するのです。現在この装置は大阪府下で大阪市立大学附属病院を含めて3施設にしか設置されておらず、 高度先進医療の臨床使用に向けて研究段階にあるところです。 以上3種類の検査方法を用い、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患について臨床研究を行っています。 (竹内一秀助教授) |