「インターネット概論」の目次

6. 情報システムの構築(前半)

平成10年12月26日23時26分(一応,完成)

後半(1月)の項目


 今月と来月は「情報システム構築」というテーマで, じゃあ今まで話したインターネットおよびインターネット技術は, 実際にどのように構築するのかを話したいと思います.

 いきなり言い訳ではありませんが,ここで話す内容は1998年12月と 1999年1月での話だということで了解して下さい. 来年度になると違った事を言っているかもしれませんが, ここ1,2年ではあまりぶれないような事を書くつもりです. この講義は昨年度の講義録に修正加筆したものですが, 修正加筆してみてもちょっとずつですが,進歩しているのが良くわかります.


6.1 広域(WAN)接続(1):組織とインターネット

 インターネットは組織のネットワークを相互に接続したものだと最初に話しました. それが組織が多くなったので,インターネットのプロバイダという仕組みを考え, そのプロバイダに組織は接続して,更にプロバイダ間は相互に接続しながら 今のインターネットはなりたっていると説明しました. 図2-6参照

 インターネットに接続する情報システムを構築するには まずはプロバイダに接続しないといけません. このプロバイダも2.3.2で話したように 1次,2次,3次プロバイダといろいろあります. ざっくり考えるなら,プロバイダの利用料金に応じて, サービスの質も変化すると思ってもらえばいいでしょう. 考えるべき事は,主な利用先はどのあたりか(海外,国内商用,国内学術等), 組織内のユーザの数や,開設している組織のホームページの重要性等があります.

 プロバイダも状況に応じて変更したり, プロバイダが廃業したりしますから,そのような場合には割り当てられている IPアドレスを変更しないといけない事がほとんどです. IPアドレスの変更は大変な事ですが,サーバでないマシンのIPアドレスは DHCP(Dynamic Host Configulation Protocol)で, IPアドレスで自動割り当てしたり, 情報システムの内部はPrivate IP Addressを与えて, インターネットとの接続では,IPアドレスの変換等で対処させる事ができます. このように内部のIPアドレスが固定されたGlobal IP Addressでなければ, プロバイダを変更しても, サーバ機やネットワーク機器のIPアドレス程度の変更ですみ, ユーザにはあまり迷惑をかけません. これから,IPv6になり,IPアドレスの変更が余儀なくされる事もあるので, 管理者は十分に考えておきたい事です.

 どのようなプロバイダを選ぶのかと同時に利用する回線速度も重要です. 64Kbpsを1人分だと考えた時に,同時に外と接続するユーザ(またはプログラム)の数や, 外から同時にホームページをアクセスされた時に 同時を何人までを快適に接続させるかがポイントになります. せいぜい,2,3人が同時に使う程度なら64Kbpsでも構いませんが, 同時になら20人から30人以上もアクセスする可能性があれば 1.5Mbpsは欲しいところです.1.5Mbpsは64Kbpsが23本取れると考えればいいと思います.

 大阪市立大学では,昨年度(1997年度)までは,学術ネットワークである ORIONSに1.5Mbpsで 接続していました. しかし,ホームページを見るのが遅いとか, 逆にインターネット側から大阪市大のホームページを見るのに時間がかかるとか, 海外の研究者(本学の在外研究員も)が大阪市大のサーバにアクセスしても 仕事にならないと多くの苦情が寄せられました. それで今年度から,ORIONSへの接続に追加する形で, 商用プロバイダに6Mbpsで 接続 しています. このように複数のプロバイダに接続する事をマルチホームといいます. 現在は,回線を太くしたため学内のユーザが比較的快適に インターネットにアクセスしていると思います.

 回線がしっかり使われているかは, 回線のトラフィックを監視していればわかりますが, ネットワークの管理者でなければ普通は正確にはわかりません. しかしユーザからは利用したいサーバまでのアクセス時間がほど良ければ いいので,これは幾つかの道具でわかります. ネットワークの管理者からみて,普通のユーザがトラフィックを測るのは あまり気持ちの良いものではありません. トラフィックを測る事で,更にトラフィックを増やしている事になるし, またそのために通過するネットワーク機器や最終のサーバに 負荷をかけている事になるからです.

 インターネットでは,端末(クライアント)からサーバにアクセスするのに, 機器(両端のコンピュータと,途中のネットワーク機器)と 機器を結ぶネットワークから必要になります. 重要なのは,この接続の中でどこがボトルネックかをしっかり把握する事が大事です. このあたりは2月の管理のところでもう一度触れると思います.

 インターネットに接続する場合にはプロトコルはTCP/IP(特にIP)ですが, 6.2節以下で述べる同一組織内では, TCP/IP以外のプロトコルをどのように使おうとも構いません.

 インターネットとの接続では,3.2節で話したように, CATVやADSLのような形態も考えられます. あまり接続に大きな金を掛けたくない組織や個人が利用する事になるでしょう. ここらあたりは来月のSOHOの所で取り上げたいと思います.


6.2 広域(WAN)接続(2):事業所間

 組織の事業所やキャンパスが離れている場合があります. また支店等があった場合には当然場所が違う事になります. 細かく言うと公道を隔てて分かれていれば広域のネットワークを使わないといけません. 同じ敷地内にあれば次節の構内接続が使えます.

 広域の接続にはいくつかの方法があります. 6.10節で話すSOHO環境も組織の中で使えば,この広域ネットワーク接続になりますが, このSOHO環境は6.10節で切り離して捉えるので,ここでは軽く触れる事にします.

 事業所間やキャンパス間などの場合には通常は,NTTなどの専用回線を使います. 高速デジタル回線などといいます. NTTや関西ならOMPは第1種通信事業者といいます. インターネット・プロバイダは通常は第2種通信事業者です. 違いは線を持っているかどうかです. 6.1節で話したインターネットへの接続もプロバイダと接続する前提として, NTT等の第1種通信事業者の線を使う事が前提となっています.

 最近ではNTT等の第1種通信事業者がプロバイダを始めました. 今までの回線代程度でインターネット接続できます. いずれは回線代にはインターネット接続も含むと言うようになるような気がします. これはCATVにしても,これから出てくるサービスである家庭の電話(加入電話)に インターネットがついてくるxDSL(デジタル加入者回線)にしても, 流れとしては同じ方向を向いているようです.

 話を戻って,高速デジタル回線では回線速度と接続する2点間の距離で, 料金が決まります.専用線ですから24時間いくら使っても固定料金です. ですから使わないと損です.逆に使わなければ必要な時だけ接続すれば良いので, それが6.10節で話すSOHO環境に出て来るPPP接続になります. あまりお金の話しは講義としてはどうかと思うのですが, 市内の電話料金(*)が1時間200円として, 24時間接続すると4,800円かかります.それを20日なら96,000円です. ところが,専用線で月4万円弱だと,こちらの方が安くなります. 問題は特定の2点間しか結べない事です.

 これも余談ですが,有料の通信を使う場合には月の料金とか, 1時間当りの電話料金等で比較すると便利です. 自宅の電話,公衆電話,携帯電話,PHSで違いますし, それぞれの通信サービスでも,オプションがいろいろあるので, 覚えておくと比較的安く使えます. 午後11時から翌朝の午前8時までのテレホーダイとか, 全国どこからでも定額料金などと,利用携帯に合わせて使いましょう.

 さて,本題に戻ります. 最近出て来た言葉ですが,「Dark fiber」という言葉があります. これは第1種通信事業者の回線を使わずに,勝手に(という言葉は悪いのですが), 線を張るものです. 張られる箇所の所有者が認めれば良いので,ときどき使われています. 通信事業者としてのこのようなサービスはないので,場合場合の接続方法ですが, これからは増えるのではないかと思っています. 第0種通信事業と言うのでしょうか. このような場合には回線の監視も組織がやらないといけないと思いますが, 回線が切れた場合はどうするのかが問題です.

 2点間が近くて直視がきく場合には,無線と言う手段があります. 無線にも大きなパラボラアンテナを用意するマイクロ波や, レーザ光線を使うものや,近くでは赤外線の接続もあります. 一般に遠くて通信速度が速いほど高い装置だと考えて下さい. 今のところ,空中権はそれほど厳しくないので,直視できれば使えます. 長所はコストが初期費用だけですむ事です. 短所はいろいろありますが,雪に弱いとか,間に建物が出来たら通信出来ないとかです. 本気で使う場合には, 切れた場合を予想して有線の回線を予備に作っておくことが重要です.

 高額な専用回線や,大がかりな無線設備を使わない場合には (無線はかならずしも大がかりではありませんが), ISDN回線で必要な時だけ接続するという手があります. ISDN回線でなくともいいのですが,普通のアナログ電話に比べて デジタルの分だけ必要に応じて回線速度を倍に出来るなどの 技術が使えるので便利でしょう.


6.3 構内接続

 同じ敷地内でも建物が離れている場合には落雷の被害を受けないように, 光ファイバーを用いるのが普通です.(無線については前節で話しました) 落雷の可能性は確率としては大変低いのですが, 実際に落雷にあってみると信号線を扱うネットワークは大きな電圧や電流に対する 対策が少ないため,接続されているコンピュータにまで被害が及びます. その意味では光ファイバーで接続する事は保険だと思えばいいでしょう.

 光ファイバーを使うという事になっても, どのような種類のネットワークを使うかについてはまだ選択の余地があります. 上の箇条書では,光リピータ,FDDI,ATMと書きましたが,これらについては 6.9節で簡単に触れるつもりです.

 建物間になると,工事も必要になってきます. この費用も案外馬鹿にならないので要注意です. 更に大事なのは工事の許可をもらう事でしょう.

 また,余談ですが,3.1.2項で OSIの7層の話をしました. この7層のアプリケーション層の上にあるのが

と(半ば冗談で)言われています. 実際にネットワーク(情報システム)を構築してみるとこのことは分かります. 理由の1つはネットワークが立て割りまたは階層構造の組織を 縦断的に接続するからでしょう. 部長(教授)同士が喧嘩している部(研究室)間を接続するのは第8層と9層が必要です. さて,第10層はなんでしょうか?


6.4 建物内接続

 建物の中になるとメタルの線が使えるので, ネットワークに選択の幅が広がります. ここでは無線のネットワークについては触れません. 単に私がそこまでフォロー出来ていないからです.

 この節では,建物の縦構造とか横構造を考えたネットワークについて考えます. よりユーザに近い部分は次の6.5節で話しましょう. 建物の構造から考えないといけない事は,必要な総距離とネットワークの速度です. 後者の速度はどのような用途にネットワークを使うかに関係します. 画像(特に動画)が関係しなければ通常のイーサネット(10Mbps)程度で十分なのですが, これからは徐々に動画の需要が出てくるので考慮しなければならない項目です.

 6.9節ではここで出てくるネットワークついて説明しますが, ここではまだ名前程度で理解して下さい. 6.3節からの話しなのですが,組織でネットワークを組む場合には 基幹系と支線系と2段階のネットワークを組んだり, 更に多段階層のネットワークを組む事が大部分です. 1つには組織の構造を反映しやすいという点もあります. このように組む場合には通常は基幹部を高速にして, 下に行くほど遅くするのが普通に考える事ですが, これはサーバの配置や, ネットワークの利用形態を正しく掴む事によって 適正な速度のネットワーク構成にする事が出来ます.

 上の意味では,ネットワークを構築するにあたっては いろいろなネットワークの特性を知った上でうまく組み合わせる事と, 将来のネットワーク需要をある程度見越した計画でないとだめでしょう. 更に,選択するネットワークがこれからの本命になるかどうかも判断の材料でしょう. 残念ながらネットワーク技術は進歩しているので, 今の技術は数年後(2〜3年後)に見直すと思って構築するしかないでしょう.

 話がとても一般的なのですが,これは仕方がないことで, 私自身ももう10年以上も前ですが,前任校でインテリジェンスビルでない所を 外壁4箇所,内壁20数箇所あける工事をしてネットワークを張っていますし, 今のセンターでは完全にインテリジェンスビルになった所での ネットワーク構築をやりました. 後者の場合でも最初の設計ではなかった事が往々にして出てくるので, いろいろな手を使いながらある場合はうまく, またある場合は応急処置をしたといった事をしています.

 建物内に情報ネットワークが敷設されれば,ユーザとの接点は情報コンセントや, HUBと呼ばれるネットワーク機器になります. このような情報コンセントやHUBがDHCPが流れていれば, 電気製品が電気を必要とときに電気のコンセントに差し込めば 100Vの交流が得られるように, 情報コンセントに接続すればすぐにインターネットに接続出来る事になります. この情報コンセントが管理された部屋の中にある場合には問題はないのですが, 誰でもが使える所にあれば,セキュリティの線で問題が出て来ます. PCのMACアドレス(3.2.1.2参照)を 登録するとかの対策が講じられ始めています. 基本的には,DHCPに認証の仕組みがない事が問題です.


6.5 グループ内接続

 ここでのグループ内とは,表現は変ですが 実際に多くのコンピュータをネットワークに接続しているネットワークの事を指します.

 このようにコンピュータを考えるようになると 逆にネットワークに選択の余地が狭くなります. これはコンピュータに接続出来るネットワークの内で安価で容易なのが, 10BaseTと呼ばれるネットワークになってくるからです. 10BaseTは10Mイーサネットと呼ばれるネットワークの1つの接続形態 (あと10Base5と10Base2がある)です.

 コンピュータもサーバ機になると, 光ファイバーのATMやFDDIに直接接続出来るオプションがありますが, 一般に高価になります. また10Mイーサネットの高速版の100Mイーサネットも安くなってきたので, サーバ機との接続方法の選択は少し難しいかもしれません. 100Mイーサも1Gイーサと進化する話がある一方, メタルの線を使うイーサネットではやはりメタルの特性上実速はそれほど出ず, やはり光ファイバーの方が速いと言う話もあります.

 ユーザ機(クライアント)の場合はどのような利用になるかが大きなポイントです. 画像(特に動画)を扱わなければ10BaseTで十分ですが, 画像,音を扱い更にはリアルタイム性を求められた場合には, まずはコンピュータ(クライアント)自体にその処理能力がある事が必要になります. すでにコンピュータとネットワークでは 部分的にネットワークがコンピュータより速い所があります.

 サーバ機はともかく,ユーザ機は10BaseTまたは100BaseTを利用形態と コンピュータの能力に応じて使い分けるのが今の正解でしょう. サーバ機が100BaseTXと言われる100Mbpsのイーサネットに接続する事が 増えてきています. 値段が安くなってきた事が最大の理由だと思いますが, Switching HUBと言って交換機能をもったネットワーク機器が出てきた事も 大きいでしょう. サーバ機を100Mbpsで,複数のユーザ機を10MbpsでSwitching HUBに接続すると トラフィックをうまく分配する事ができます.


(*)Message Area

大阪だと(06)局内のように同一料金のところを,MA(Message Area)といいます. 1つの都道府県では大体,数MAで構成されています. 自治体も含めてプロバイダでは1つのMAに1つのAP(Access Point)を 置くように努力しています. 大阪市と堺市のように隣接MAという言葉もあります.


DHCP

IPアドレスや,サブネットマスク値や,Gateway アドレス (そのサブネットの外に行くために通るネットワーク機器などのIPアドレス)を 与えるためのプロトコルです. Windows系のPCやMacintosh等のユーザ端末では,DHCPクライアントと呼ばれる ソフトウェアが動いていて,DHCPサーバと言うソフトウェアが動作している サーバ機やネットワーク機器からDHCPのプロトコルを使って 必要なIPアドレス等を取り込みます.


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